“世界最小”のレースに挑め!

2017年4月20日放送 10:05 - 10:14 NHK総合
くらし☆解説 くらし☆解説

「ビスビナフチルデュレン」は防虫剤に使われているナフタリンに似た構造の人工の化学物質。粉の中の一つ一つの分子がナノカー。サイズは1mmの百万分の1数ナノメートル。肉眼では見えないが特殊な顕微鏡では動いている様子も見られる。ナノカーは「動く分子」「分子マシン」とも呼ばれている。物質はプラスマイナスの電気的な力で結びついていて、外から電気エネルギーを加えると結びつき方が変わる。車輪が回転するような変形をする性質を使って走らせるのがナノカー。
世界初のナノカーレースが行われる。主催するのはフランス国立科学研究センターで、フランスやスイスなどの大学や研究機関6チームが参加。日本からは物質・材料研究機構が参加する。去年、分子マシンの設計と合成に先駆的な役割を果たしたとして欧米の3人の科学者にノーベル化学賞が与えられた。ナノカーは病気をピンポイントで治療でき、将来的にはガンや認知症などの新しい治療法が生まれる可能性もある。さらに電子回路の分野では超小型コンピュータが実現する可能性もある。ほかにも新素材、センサー、エネルギー貯蔵システムなど様々な分野での応用が考えられている。今回のレースはプジョー・シトロエンやフォルクスワーゲン、トヨタなどの自動車メーカーも支援している。
ナノカーレースのコースは走査型トンネル顕微鏡の中の真空中に置かれた金の表面の溝に沿って100ナノメートルを走行する。顕微鏡に微弱な電気を流し、さらに強い電気エネルギーを与えることでナノカーが動く仕組み。強く電気を流しすぎるとナノカーは壊れてしまうため、オン・オフを来る返しながら少しずつ前進させていく。制限時間は36時間の設定で、完走できないナノカーもあるとみられる。各国のナノカーの分子は事前に公表されていて、日本は車輪ではなく両端が動きバタ足のように進むのが特徴。リーダーの中西和嘉博士によると今回のコースは凸凹が大きく車輪だとハマって動けなくなる危険があるため足をつけるというアイデアにしたという。中西さんは3種類の薬品を70℃くらいに加熱し、化学合成をさせることで生み出した。ナノカーの中身は炭素と水素と酸素と身近な物質だがこれまで自然界では見つかっていない新物質。レースは日本時間4月28日午後6時にスタート予定。レースの様子はインターネットで世界に中継される。


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