2024年2月14日放送 19:30 - 19:57 NHK総合

クローズアップ現代
買い物や病院に行けない…バス減便・タクシー不足

出演者
高井正智 吉田樹 
(オープニング)
オープニング

オープニング映像。

キーワード
ライドシェア養父(兵庫)
(クローズアップ現代)
バス減便 タクシー不足 あなたの暮らしに直結

バス路線減少マップによると2011年度から10年余りの間におよそ4万キロが廃線になったり他の移動手段に置き換えられたりした。人口が集中する首都圏にも及んでいる。代わりとなるタクシーは法律で公共交通に位置づけられているがそのドライバーの数もこの10年で約4割減って利用するのが難しくなっている。千葉市に暮らす南雲治子さんは去年10月にバス路線が1日32本から2本に減少し買い物にも影響している。持ち歩ける量に限りがあるので重い商品などは購入を諦めている。片道2kmで30分かかる。タクシー乗り場もあるが車をつかまえにくくなった。この地域のタクシードライバーの数は4年で2割減少し客を待たせる時間も長くなっているという。南雲さんは買い物の頻度を週3回から1回に減らした。同じ地区に暮らす定松登志江さんは以前はバスやタクシーで出掛けていたが今はタクシーの予約が難しくなり必要最低限しか外出しなくなった。

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国土交通省福島大学緑区(千葉)
バス減便 タクシー不足 観光地で異例の事態

大分県別府市では行楽シーズンにも関わらずタクシー会社が異例の事態が。別府市では新型コロナの影響で観光客は減少したものの3年前から回復傾向に。一方でタクシードライバーの数は減少が続いている。その結果限られたタクシーを観光客と地元の住民が奪い合うことに。行政には悲痛な声が寄せられている。別府市は県外から移住しドライバーとして就職した人に最大400万円を支給したがこの半年ほどで確保できたのはわずか2人。その理由はドライバーの賃金の低さにあるという。ドライバーの賃金ほ低さは全国にも共通する課題です。この15年、他の産業と比較して約3割低い水準です。

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別府市別府市役所別府(大分)厚生労働省賃金構造基本統計調査
バス減便 タクシー不足 追跡!ドライバー低賃金

静岡県にある会社のタクシードライバーは朝、仕事を始めてすぐに乗客がつかまりました。その後4時間で6組の客を次々と乗せていきます。午前中は通院や買い物などで利用され需要が多い。しかし午後になると客足が途絶えた。この会社の時間帯別の乗客数を見ると1日のうち4割以上が午前中に集中しその後客足は減少する。そのため長時間働かなければ売り上げは伸びない。この日16時間働き売り上げは3万円でした。手取りを時給に換算すると最低賃金に満たないこともあるため差額は会社が補填します。会社は負担が大きいが地域住民の暮らしを支えようと赤字経営に耐えているという。

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静岡ひかりタクシー静岡県
バス減便 タクシー不足 暮らしが立ちゆかない

福島大学の吉田樹さんのスタジオ解説。タクシーやバスに思うように乗れない状況はこれまでは地方の過疎地の問題として捉えられてきたがこれからは大都市圏の近郊でも深刻な問題になってくる。バス会社やタクシー会社は企業としては黒字を保っていたとしても乗り合いバス事業単体で切り出せば9割の会社が赤字。大都市圏の近郊でも人口は減ってくる状況にあるので日本全体として移動のセーフティネットが脅かされている。年間給与を比較するとバスやタクシーの運転手は全産業の平均と比べて低くなっている。最近運賃値上げで賃上げしていこうという動きが見られるようになったがバスやタクシーの運賃は基本的に国からの認可運賃で決められるため賃上げの流れに乗れてこなかった。国は4月からライドシェアを導入すると発表した。一般のドライバーなどが自家用車で人を運び料金はタクシーと同水準だが地域や時間帯は限定する。

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ライドシェア厚生労働省福島大学自家用有償旅客運送制度賃金構造基本統計調査
一般ドライバーが運転手 運賃は?安全性は?

富山県高岡市の人口5,500の中田地区で移動の新たな担い手になっている人たちがいる。住民を迎えに来たのは近所の女性です。利用者は予約を入れてスーパーや病院など地区内の行きたい場所に連れて行ってもらいます。料金は1回500円でそのうち200円がドライバーにわたる。この仕組みを運営するのは中田地区コミュニティ協議会。住民の中からドライバーを集め移動手段に困る人をサポートする。この制度では利用者が移動できる場所を限定し既存の公共交通の利益を圧迫しないよう条件を設けている。最も注意を払ったのが安全性の担保です。安全管理は市内のタクシー会社に委託しアルコールチェックなど遠隔で体調管理を行う。明るい時間帯や走り慣れた道に限定し事故のリスクを最小限にした。

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高岡(富山)
“ライドシェア”のゆくえ 公共交通の課題

福島大学の吉田樹さんのスタジオ解説。ライドシェアについて、今の国土交通省の原案だと国はタクシー会社にプロドライバーと同じ程度の研修や指導、接客態度の指導をタクシー会社に求める予定でタクシー会社にとってみたら負担が大きい。全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗さんはタクシー会社が責任を負うのは負担感が大きいが試行錯誤して進めていきたいと話している。ライドシェアで運転手不足を一時的に解消する効果はあるが一方でアプリで予約をする、運賃を事前確定するなど色々な制約があるので全ての地域・事業者が参入できるとは限らない。日本は先進諸国の中では唯一、主に民間の交通事業者が広い範囲でサービスを維持してきたという変わった特徴がある。公共交通といわれながらも民間企業に依存している部分が大きいが人口が減っていくことでそれを支えていくシステムに限界に達している。

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ライドシェア全国ハイヤー・タクシー連合会国土交通省川鍋一朗福島大学
仏のライドシェア 移動の自由「交通権」

フランス南東部のサン・タルバン・ド・ロシュは人口2000の田舎町です。この町から35km離れた主要都市に通勤しているシルヴィアンヌさんが毎日利用するのが国と自治体が共同で整備したライドシェアです。ライドシェアに登録するドライバーは近隣の住民700人にのぼる。ドライバーは通学や通勤などでそもそも移動の予定がある人です。サービスを利用したい人はアプリで目的地を指定すると同じ行き先の車に相乗りできる。料金は無料でドライバーへの報酬は行政が負担する。乗客1人につき2ユーロ。月に40ユーロを受け取る人もいる。利用実績は6年で3万回にのぼる。行政が地域の移動手段を整える理由は1960年代頃から始まった公共交通の問題にある。自家用車の普及が進み路面電車などが相次いで廃止され公共交通が不便になった農村部から人口が流出した。そこでフランスは国民の移動の自由を守る交通権を法律で定めた。この権利を守るために公設民営方式を採用した。まず地域の自治体が地元の企業から従業員に支払われる給料の0.5~2%を交通税として徴収し財源を確保。行政は地域のニーズに合わせた公共交通を設計し運営は民間企業に任せる。この地域では公共交通機関を整備し人口は増加している。

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サン・タルバン・ド・ロシュ(フランス)フランス国立統計経済研究所ライドシェアリヨン(フランス)公設民営方式国内交通基本法
「移動の権利」守るには? 公共交通が町の未来に

福島大学の吉田樹さんのスタジオ解説。日本でも2010年頃に移動権が議論されたことがあるが時期尚早と判断された。フランスの例では公共交通があることによって企業は従業員を雇い入れることができているなど色んなメリットがある。メリットを享受する皆さんが広く薄く負担をするいわば健康保険のような形で公共交通の改善に役立てていく発想も日本に必要なのではないか。滋賀県では公共交通を整備するために全国で初めて交通税の導入が検討されている。地方都市で車を使っている方々に対してもこの取り組みに共感してもらえるかが重要。普段車を使っていても運転できないときに公共交通は役に立つがなかなか実感してもらえず発信もできていない。その中で行政はどのような町にしていきたいのかしっかり描いてそこに共感を持っていただき公共交通を設計し作っていくことが必要。

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ライドシェア交通政策基本法福島大学

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