2023年10月2日放送 22:00 - 22:45 NHK総合

映像の世紀バタフライエフェクト
竹のカーテンの向こう側 外国人記者が見た中国

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(オープニング)
今回は…

建国から20年以上に渡り、西側諸国と国交を結ばなかった中華人民共和国。「竹のカーテン」に隔てられた謎の国を前に、西側のジャーナリストたちはあらゆる手段を用いてその実像を探ろうとした。数千万の死者を生み出した大躍進政策、破壊と暴力の文化大革命、そして天安門事件。大きな変革が巻き起こる度、巨大国家と外国人ジャーナリストの戦いは激しさを増していく。今回は、分厚い竹のカーテンに挑み続けたジャーナリストたちの物語。

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エドワード・ハンターザ・マイク・ウォレス・インタビュー洗脳
オープニング

オープニング映像。

(映像の世紀 バタフライエフェクト)
竹のカーテンの向こう側 外国人記者が見た中国

1936年。未だ弱小軍閥の一つに過ぎなかった中国共産党の実態を探るため、1人のアメリカ人ジャーナリストが西安を訪れた。彼の名はエドガー・スノー。貿易船のデッキボーイとして7年前に中国へ降り立った30歳の青年だった。当時の中国共産党は蒋介石率いる国民党からの弾圧を避けるため内陸部に逃れていたが、スノーは孫文の妻・宋慶齢を通じて取材を取り付けることに成功。西安へ向かったスノーを出迎えたのは、髭をたくわえた青年将校・周恩来だった。晴れて毛沢東への面会が叶ったスノーは彼の生い立ちから思想に至るまでを詳細に聞き取り、1937年に著書「中国の赤い星」を刊行。この本は世界中でセンセーションを巻き起こし、スノーはルーズベルト大統領から中国事情をヒアリングされるまでになる。

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1946年になると、中国では第二次国共内戦が勃発。共産党と国民党が中国の覇権を巡って争うことになった。戦局が共産党有利に傾き、毛沢東が中国の覇権を手にするのは時間の問題と見られていた頃、タイム誌特派員のセオドア・ホワイトは毛沢東に一つの質問を投げかけた。「『報道の自由』についてあなたの見解を聞きたい。あなたが権力を握ったら、誰でも何でも書けるのか?」。毛沢東は答えた。「もちろんだ。『人民の敵』以外はね」。それから程なくして、人民解放軍は北京入城を果たす。中国を手中に収めた毛沢東は1949年10月1日に中華人民共和国の成立を宣言したが、西側諸国の多くは台湾へと逃れた蒋介石政権と国交を維持し毛沢東政権を国家として承認することはなかった。アジアに巨大な社会主義国家が誕生する様を目の当たりにしたアメリカは大きく動揺し、国内では赤狩りの嵐が吹き荒れることになる。「中国の赤い星」を刊行したエドガー・スノーも「共産主義者」の烙印を押され、アメリカを逃れてスイスへと移り住んだ。

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中華人民共和国の建国後、毛沢東政権は第一次五カ年計画を提唱して農業の集団化を図る。しかし、その裏では集団化に反発する知識人に対する政府の弾圧も行われた。こうした社会主義の理想の裏側を暴いたのが、フランス人ジャーナリストのロベール・ギラン。彼はこの報道が元で中国政府の怒りを買い、10年間の入国禁止処分を下された。

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ロベール・ギラン

1958年になると、毛沢東はさらに急進的な政策「大躍進政策」を打ち出していく。「15年でイギリスを追い越す」をスローガンに政府は農産物と鉄鋼の大幅な増産を進めたものの、その目標はあまりにも非現実的だった。各地では飢饉が続発し、イギリス統治下にあった香港には飢えから逃れようとする難民たちが相次ぐ。難民たちは本土では多数の餓死者が出ていると口々に語ったが、中国本土ではその実態は徹底的に秘匿された。ノルマを達成できなかったことを隠蔽するために虚偽の報告が相次ぎ、政府でさえも正確な数値を把握していなかったのである。こうした中、エドガー・スノーは20年ぶりに中国を訪れて「大躍進政策」の真相を探ろうとしたが、誰もが口を閉ざすだけで実態を語ろうとはしなかった。

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1966年8月9日、大躍進政策の失敗によって権威に陰りを見せていた毛沢東は新たな革命、「文化大革命」を提唱する。これは毛沢東が党内で存在感を増す劉少奇を打倒することを目論んだ権力闘争に過ぎなかったが、革命の熱は若者たちを過激な行動へと掻き立てた。「紅衛兵」を名乗る若者たちは伝統や旧来の文化を尽く破壊し、中国には暴力の嵐が吹き荒れる。西側諸国はこの突如勃発した「革命」の実態を探ろうとしたが、果たせぬままに月日だけが過ぎていった。そんな中、1970年10月1日の建国式典の壇上に意外な人物が現れた。エドガー・スノーである。当時の中国はソ連との対立を深めていたことから、アメリカ人のスノーを利用してアメリカへの接近を図ろうとしていたのである。これがきっかけで1972年にはニクソンが中国を電撃訪問し、米中は一気に関係を深めていくことなった。しかし、スノーがその光景を目にすることはなかった。ニクソン訪中の6日前に息を引き取ったスノーの追悼式では、宋慶齢による弔問が読み上げられたという。

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1980年代、最高権力者となったトウ小平によって中国は改革開放路線を歩むことになる。西側の記者にも門戸が開かれ、自由への機運が高まっていた1989年4月、天安門広場では改革派の胡耀邦を追悼する集会が開催される。しかし、その集会は次第に民主化を求めるものへと変わっていった。党指導部はこの動きを危険視し、機関紙「人民日報」で「民主化運動は深刻な陰謀であり動乱」とする社説を発表。しかし、この言説は人々の反発を招き、10万人に及ぶ学生たちが政府との対話を求める事態にまで発展。改革派であったソ連のゴルバチョフ書記長が中国を訪れたことも学生たちにとっては追い風になり、民主化運動はさらに拡大していく。ゴルバチョフ書記長が中国を後にした2日後の5月20日、中国政府は戒厳令を発令し25万人の兵士を動員。街中には軍隊が溢れ、外国人記者たちも政府によって取材を禁止された。

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1989年6月4日、午前0時17分。天安門広場に人民解放軍の装甲車が突入し、集まっていた人々に向けて銃撃を開始する。目の前で起こった凶行を外国人記者たちは命がけで報道し、その実態を世界中に伝えた。数えきれないほどの死者と負傷者を出しながらも人民解放軍は5時間後に天安門広場を制圧。その凄惨な光景が世界に報じられる中で、ある映像が撮影された。通りを行進する戦車の前に立ちはだかる男性、通称「戦車男」の映像である。この映像は人々の勇気の象徴として繰り返し再生されたが、いくつかの奇妙な点も残っている。既に広場は軍によって制圧されていたにも関わらず、何故「戦車男」だけが厳重な警備を掻い潜って戦車の前に立てたのか?人民解放軍はどの場所にどの報道機関がいたのか事前に把握していたにも関わらず、何故各国の報道機関が陣取る「絶好のポイント」であのような事件が起こるのを許したのか?真相は不明だが、天安門事件の11年後に江沢民は次のように語っている。「私が強調したいのは、すべての市民が自分の願いを自由に表現する権利を尊重しているということです。一方で、私は政府に対する行き過ぎた反抗は指示しません。しかし、そんなときでも戦車は停止し、若者をひいたりはしませんよ」。

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数えきれない程の欺瞞と弾圧が繰り返される中、「竹のカーテン」の向こう側に迫ろうとする戦いは現在も続いている。歴史学者のフランク・ディケーターは機密解除された公文書を収集し、実態が謎に包まれていた大躍進政策による犠牲者が4500万人以上に上ることを突き止めた。これに対し当時の国家副主席・習近平は「中国共産党の歴史を歪曲し誹謗中傷する間違った風潮」と反発。その後、中国の公文書は極めて厳しく管理されることになった。2022年には中国国内でゼロコロナ政策に反発する大規模なデモが勃発し、これを取材していたBBCの記者が中国当局に拘束される事態となった。中国当局によって拘束された外国人記者は2022年時点で110人。これは6年連続で世界最多の数字である。

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中国共産党の設立から100周年となる2021年、中国政府は全国人民代表大会で世界中のジャーナリストに向けたメッセージを発表している。「今から80年以上前、エドガー・スノーらの外国人ジャーナリストが中国陝西省延安にやってきて、自分たちが目にし、感じたことを忠実に世界に紹介しました。スノーは共産主義者ではありませんでしたが、イデオロギーに偏ることなく客観的に、公正な良心をもって中国共産党の実像に迫ろうとしました。中国はより多くの外国メディアの記者が『新時代のスノー』となることを望み、歓迎します」。

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(エンディング)
エンディング

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次回予告

映像の世紀 バタフライエフェクトの次回予告。

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