2024年4月20日放送 22:00 - 22:50 NHK総合

NHKスペシャル
H3ロケット 失敗からの再起 技術者たちの348日

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NHKスペシャル
H3ロケット 失敗からの再起 技術者たちの348日

2月17日にH3が打ち上げに成功した。国内の最大の大きさとパワーを兼ね備えた新型ロケットで、日本の宇宙開発の未来を担う切り札だがその成功までの道のりは波乱に満ちたものだった。去年3月には最初のH3ロケットは飛行中にエンジントラブルとなりやむなく破壊されることになった。完璧に仕上げたはずのロケットだったが失敗した理由はなにか?その開発の現場に密着した。アメリカのワシントンで行われたSATELLITE 2024は人工衛星の見本市。気象情報や地図アプリの位置情報など人工衛星は今や暮らしに欠かせない。参加者の視線を集めていたのは衛星を宇宙に運ぶロケット。その打ち上げを担う各国の企業や組織の面々が集結。イーロン・マスク率いるスペースXの発言のがこの業界の勢いを象徴した。世界でロケットの打ち上げは年々増えていて、この5年で倍増し大半がアメリカと中国。日本はフランスやインドに次ぐポジション。各国は大型ロケットの開発を行っていて、近年人工衛星は性能や機能により重くなる傾向にあり、近い正体には月や火星への進出を目指し探査機や物資や人を運ぶ未来が来ると言われている。そのためにより重いものを遠くに飛ばせる強力なパワーをもったロケットの開発が不可欠となっているという。

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すでに今年1月にアメリカの民間企業が新しいロケットの打ち上げに成功し、またヨーロッパの宇宙機関のESAも今年中に新たなとロケットの打ち上げの成功を目指す。日本が立ち上げたのはH3ロケットの開発プロジェクト。これまでの日本のロケットはH2AとH2B。打ち上げの成功率は98.2%。防災に必要な観測衛星や国防のために情報収集衛星など、外国のロケットに頼らず打ち上げることを実現してきた。問題は、一回の打ち上げ費用は100億円かかること。アメリカが75億円とも言われる中でこのままでは競争に負けてしまう。そこでH3ロケットは、一回あたりの打ち上げコストを50億円にすることにした。開発の中心を担うのはJAXAと三菱重工業。電気やエンジン、機体の構造などそれぞれの専門ごとに150社以上のメーカーも参加し、2000億円以上の国費が投じられた巨大プロジェクト。9年がかりで新たな大型エンジンを開発し、部品を減らしてコストを下げパワーアップを実現させた。そして完成させたのは高さ57mの巨大ロケットで、最大で従来の1.3倍の重さの人工衛星などを運べるようになった。去年3月には鹿児島県の種子島でH3ロケット のはじめての打ち上げが行われた。打ち上げから5分が過ぎた頃に、2つ目のエンジンに火がつかない重大なトラブルが発生した。そしてミッションの途中でのロケット破壊が決定し、その中で呆然としていたのはH3ロケットの開発プロジェクトを統括してきたJAXAの岡田匡史。

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破壊されたロケットには、大事な人工衛星が積み込まれていて、地球観測衛星のだいち3号は防災や災害対応の新たな切り札として国が280億円を投じて開発した。これまでと比べ高精細な地上の画像を得られる最新鋭いの人工衛星。岡田はこの人工衛星を失ったことが大きいと答えた。エンジンがなぜ着火しなかったのか?地上に届いていたデータを元にすると第二段エンジンで電流と電圧に異常が起きた可能性を示していた。岡田たちが原因救命に使ったのは、故障の木解析と呼ばれる手法。事故や製品の故障などあらゆる故障のトラブルを見つけるために使用される。豆電球の電気がつかなかった場合にその原因は電池、回路、豆電球の3つにある。木解析では考えられる原因を全て書き出しをし、もし電池が原因だった場合に原因として考えられるのは電池が切れていたり、汚れていたりなど、他の2つも同様に考えられる原因をつぶさに洗い出す。こうして一つ一つの可能性を余すことなく検証し該当しないものを除外していく。バツをつけながら不具合の原因を絞り込む。しかし部品の数が多いロケットの場合は気の遠くなるような検討が必要になる。第2段エンジンが着火しなかった原因は?解析が進むほど原因は枝分かれしていく。送られてきたデータからどんどん除外していき、わからないものは試験をして試していくという。

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H3ロケットだいち3号宇宙航空研究開発機構

毎回長時間に渡る議論を重ねるJAXAと三菱重工業。答えにたどり着くことは容易ではなかったという。そもそもロケットに使用される部品や装置はどれも厳しい検査をくぐり抜けてきたもの。しかしロケットの飛行中に予想外の出来事が起きていた可能性も考えられる。宇宙環境と似た真空状態にできる施設で、トラブルが起きたとされる部品をいれて試験を行った。結果は問題はなく、第二段にエンジンの着火直前に、第一段と切り離す際の衝撃が影響した可能性はないか?実際にその部分を切り上げその部分を再現したが問題はなかった。原因となる問題を絞り込めず、次の打ち上げの目処が立たずに月日が経過していた。H3ロケットは、2024年度までに7つの人工衛星などを宇宙に送り届ける予定だった。それが全て延期になり、更に日本が計画していた月や火星の探査計画も遅れが生じる事態に。世界ではじめて火星の衛星への着陸を目指すMMXの打ち上げは2年延期に。その間にも世界では次々にロケットが打ち上げられていく。このままH3ロケットの実用化が遅れると日本は世界の宇宙開発競争から脱落することにもなりかねない。日本の宇宙政策を議論する国の委員も危機感を訴えた。

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H3ロケットMMX三菱重工業宇宙航空研究開発機構月極域探査ミッション

原因究明を進める以外な助っ人が登場。きっかけはH3ロケット電気班の責任者の小林泰明の受け取った一通のメールで、詳しい資料を見ることができれば自分たちも原因を探り役立つことができるかもしれないとの申し出があった。メールの送り主は打ち上げ失敗で破壊されたあの地球観測衛星だいち3号の担当者だった。四人の助っ人はかつて人工衛星で電気的な故障を究明した経験をもっている。その川北たちが注目したのは第二段エンジンで火花を起こす点火装置。30年の前に開発されこれまでに200回近く支えてきた信頼性の高い装置。点火装置はオン・オフを繰り返すことで火花を起こすが、オンする瞬間に規定をこえて電圧があがる可能性があるとわかった。それにより、点火装置が正しく動作せずにエンジンに火がつかないトラブルも否定できない。電気系統の専門家である川北たちは電圧や電流、オン・オフのタイミングなど徹底的に試験を行った。実に1000回以上の試験が行われ、その結果電気的な障害が発生することは0ではないという結論に。原因だと断定はできないが対策を打つべきという判断がくだされた。

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H3ロケットだいち3号宇宙航空研究開発機構

三菱重工業などで行われていた試験でも、対策を取るべき装置が見えてきた。H3ロケットで新たに取り入れた制御装置では、エンジンやタンクの圧力の制御に使用される。部品の故障で過剰な電流が流れば、エンジンに着火しない可能性があるとわかった。打ち上げ失敗から170日が経過し考えられる原因が7つにまで絞られた。万全を期すために全てに対策を打ち再チャレンジの道筋がたった。11月にはロケットの組み立てが行われ、失敗は許されないと岡田は自問自答を繰り返していた。打ち上げ失敗から280日が経過し、岡田はとった対策が本当に大丈夫なのかを確認する新たな試験を行おうとしていた。これまで様々なロケット開発を行ってきたが打ち上げ失敗も経験し前進してきたという。試験を行うのは三菱重工業の工場。

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H3ロケット三菱重工業宇宙航空研究開発機構

試験はエンジンの点火に必要な装置を実物大に組み上げ行われた。直径およそ4mで丸ごと真空空間に入れて飛行中と同様に作動させて火花が出るか確かめるという。岡田も経験がない大規模な試験で2日にわたって行われた。岡田は打ち上げに確信をもてるデータを取れたと語った。1月10日に岡田は再挑戦となる打ち上げについて会見を行った。口にしたのは過去に実績のある装置を見直すことの難しさだった。2月2日にロケットに人工衛星が積み込まれ、今回H3ロケットが宇宙に運ぶのは2機の超小型衛星。全壊破壊してしまっただいち3号の代替品のダミー衛星も。狙いはロケットとの衛生の分離機能が働くかどうかダミーを使って確認をする。2月16日の打ち上げ前日に機体を発射地点に移動させた。

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H3ロケットTIRSATVEP-4三菱重工業宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センター

そして打ち上げ当日、今回新たに成功させる3つがある。1つ目は全壊失敗した第二段エンジンの着火。2つ目は超小型衛星を目的地に届ける。H3ロケットがはじめて宇宙に衛星を届ける瞬間になる。3つ目はダミー衛星を切り離せるかどうか。これが成功すれば自信をもって大型の人工衛星をのせることができるという。打ち上げを行い、管制室のメンバーが食い入るように見ているのは送られてくるデータ。前回失敗した第二段エンジンの着火が成功し、超小型衛星の分離が行われ成功。H3ロケットがはじめて仕事をやり遂げた。さらにだいち3号のダミーの切り離しも成功しようやく第一歩を踏み出した。

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H3ロケットだいち3号宇宙航空研究開発機構種子島宇宙センター

今年3月に衛星ビジネスを発展をさせようと行われた国際見本市で、450社ものブースが設置され賑わっていた。H3ロケットで衛星を打ち上げたい顧客を探そうと担当者は面談を重ねていた。この日の相手はイギリスの通信会社。5年以上前に打ち上げに合意していた案件が本格的に動き出したという。H3ロケットは今後本格的に世界市場へ打って出る。今後世界と競っていくためにはさらなるコストダウンがかかせない。同じ頃に愛知県では次のH3 ロケットが種子島に向け送られようとしていた。今後量産できる仕組みができれば打ち上げコストは目標の50億円に近づくという。

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