未解決事件 File.03 大手ハウスメーカー 地面師詐欺事件
ある中間業者は積水ハウスマンション事業部のある幹部と面識があり、五反田の土地の購入を持ちかけた。法的効力を持つ公正証書ではなりすましの女を所有者本人と認めていて、積水ハウスでは土地の購入を急ピッチで進めていった。業界に情報が知れ渡るなか、地面師詐欺だと疑っていた業者は積水ハウスに連絡するも、取り付く島もなかったという。積水ハウスのグループ会社で社長を務めていた松吉三郎氏も連絡を入れたが、「横槍を入れるな」と指摘されていた。実は積水ハウスにはある文書が4度にわたり、送られてきた。差出人は土地を所有するおかみで、「別人が私になりすましている」、「売却意思は皆無」などと記されていた。だが、積水ハウスは他社の妨害工作などと疑い、本人確認を見送った。五反田エリアの営業担当だった元社員は所有者と何度か面会していて、会社に届いた写真を見て、「たぶん違うと思う」と回答。だが、上司は確度の低い情報だと経営幹部に報告しなかった。
決済前日、なりすましの女は干支を間違えたが、地面師グループの男が取り繕った。だまし取られた金額は55億599万円。事件後、積水ハウスは複数の再発防止策を実行している。大阪・関西万博に沸く大阪では新たな被害が発生している。巨額詐欺の舞台となった東京・五反田の土地にはタワーマンションが建設され、土地を所有していた女将は他界したという。
