- 出演者
- 渡邊佐和子 佐藤二朗
オープニング映像。
「解体新書」で知られる杉田玄白は平賀源内を「優れた才能を持ち、時代の寵児」と激賞している。調査を担当したのが塩崎実央アナウンサーで、英語とドイツ語が話せ、中学から大学までソフトボールに打ち込んだ。そして、平賀源内は発明家、小説家、イラストレーターとマルチに活躍した。
若き日の平賀源内が暮らした家の庭には多種多様な植物が植えられ、アロエやウコンなど海外由来のものもあった。また、動物や魚介類、虫なども蒐集し、鑑賞していた。自然界に存在するあらゆるものを研究することは「本草学」とされる。そんな平賀源内は高松藩の下級武士で、周囲から軽侮されていたという。全国の産物に精通する本草学者は江戸幕府に仕えることもありえたといい、源内も立身出世を目指した。だが、本草学の研究にはとかくお金がかかった。7冊の洋書図鑑を購入するのに約2千万円を要し、さらに全国をめぐる旅費も重くのしかかる。源内は娯楽小説を執筆し、代表作「根南志具佐」では恋愛スキャンダルをテーマに。また、高級な素材を使った櫛を有名花魁に進呈し、評判を集めて大ヒットを記録。
石上敏教授は本草学について、「世界の様々なものを理解し、得られた知識を組み合わせて新たな枠組みで物事を考えたりする」などと説明。平賀源内は多数の洋書図鑑を購入し、高松藩が制作した魚図鑑「衆鱗図」に携わったとされる。日本全体をフィールドワークし、研究書も執筆。本草学者として語学力、観察力、文章表現力に長け、地理にも精通していた。江戸幕府からの命で芒硝(硫酸ナトリウム)を見つける任務を任され、伊豆で発見に至ったという。
静岡・上船原では温泉が湧き出ていて、周囲で見つかった石の表面に白い粉が付着していた。化学分析を行ったところ、硫酸ナトリウムと確認できた。平賀源内は日本で未発見だった芒硝(硫酸ナトリウム)を見つけたとされる。源内は珍しい物産を各地から集めて研究する会合を催し、学者のみならず、医者や商人、農民も参加できた。伊豆の農家から珍しい産物について調査を引き受けたところ、源内は芒硝と気づいたという。
平賀源内はある特定の集団に独占されていた知識、モノ、コトの裾野を広げ、時代を変えていくきっかけとなった。源内が発見に貢献した芒硝は量産化が図られ、多くの人々に安価で提供されたという。また、黒砂糖を白砂糖へ精製する技術が確立されていなかったなか、平賀源内はサトウキビから白砂糖まで精製する過程を図解し、著作を通して人々に伝えた。小説家、発明家として有名になったが、本草学者として身を立てることができず、他藩や幕府に士官することもできなかった。失意のうちに平賀源内はこの世を去る。
平賀源内は海外から伝わった顔料「プルシアンブルー」を絵画に取り入れ、絵師たちは深く鮮やかな青に驚いたという。国内で青を表現する際、本藍が使われていた。プルシアンブルーは微細の粒子が和紙の繊維に絡まることで着色する。粒子の密集部分は濃い青、分散していると薄い青になる。江戸の美術史に詳しい勝盛典子さんは「プルシアンブルーにより、風景版画、名所絵が人気となった」などと説明。葛飾北斎の富嶽三十六景、歌川広重の東海道五十三次といった名作が生まれることとなる。
風景画の人気となった背景にプルシアンブルーがあり、平賀源内がいち早く注目していた。佐藤二朗は無用な垣根を取り払うことに源内が貢献していたことに感銘を受けたという。
「歴史探偵」の次回予告。