2024年7月16日放送 4:50 - 5:00 NHK総合

視点・論点
超高齢化社会に向けての医学教育改革

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視点・論点
超高齢化社会に向けての医学教育改革

人口の3割近くが高齢者となり病院に訪れる患者の数の5割が高齢者と推定されながら医学及び医学教育の基本モデルが50年前とほとんど変わっていない。70年代からアメリカにならい日本の医学は臓器別診療に舵を切った。現在、大病院特に大学医学病院にいくと昔ながらの内科や外科という診療科はなく循環器内科や呼吸器内科などの臓器別診療科で診療を行い、臓器別に来ないことが原則になっている。難しい疾患を一つ抱える人にとってみたらその臓器やその疾患を専門とする医師やその疾患を専門家とする医師のグループに細かいところまで見てもらえ、誤診も少なく治療方針も打倒で国際標準のものになりやすいという大きなメリットがある。しかし人口が高齢化すると高齢者は同時にいくつかの疾患を抱えやすいために臓器別診療では不都合な事態が生じる。一つは薬の多剤併用という問題ではそれによって有害事象が起きるポリファーマシーの問題がある。臓器別診療では自分が診ている患者が専門外の疾患も併発している場合にその病気の専門家に紹介することが原則。一人の患者が浮く数の診療科を受診することになるために薬の種類が増えてしまう。3つの診療科から3種類ずつの薬を処方されると9種の薬を処方されることになる。あるいは、ある臓器別診療の医師として大病院や大学病院に勤務していた医師が内科に来て開業するような場合では専門外の疾患にはいろいろな病気の標準的な治療が書かれたマニュアルのような本に頼ることになりがちで、多剤併用が簡単に生じてしまう。さらに東大老年科の入院データベースには薬物の有害事象は6種以上併用で急激に増える。また東大老年病科の医師らによる調査では5剤以上の併用で4剤までの併用と比べ2倍になり40%以上の人がふらつきや意識がぼんやりするなどの症状が出るという。医師がこのように多種類の薬を処方するのは金儲けのためではない。院外処方が原則の現在では、多種類の処方をしても医師の収入は増えない。全ての臓器について正常を求め、多剤併用の害を考えない医学教育がこのような多剤併用をもたらせている。もう一つの臓器別診療の弊害はある臓器にとって有益なことが別の臓器にとって有害なことがあり得る。例にコレステロールという物質は高値である動脈硬化が進み心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクがありこの値が高い人は下げる必要があり脂質異常治療薬や脂質低下薬などが改善に用いられる。実際にハワイの住民調査でもコレステロール値が高いほど虚血性心疾患による死亡率が高いことがあきらか。コレステロールは免疫細胞の材料となるためにこの値が高い人のほうが免疫活性が強いとされる。すると体の中でできる出来損ないの細胞の掃除がうまくいくためにガンになりにくい。前日のハワイの住民調査でもコレステロール値が高いほどガンによる死亡率が低い。またコレステロールは男性ホルモンであるテストステロンの材料であるためにこの値が高い人の方が高齢になっても意欲的で老化が緩徐だという。コレステロールは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを脳に運ぶはたらきがあると想定され、コレステロール値が高い人のほうがうつ病になりにくくなっても治しやすいという調査結果も。このように循環器内科の医師にとっては有益な薬だが、免疫学やホルモン医学、精神医学の立場から見るとデメリットが大きい。

キーワード
ポリファーマシー東京大学虚血性心疾患

そして東京・小金井市で15年間に渡る70歳高齢者の追跡調査を行ったがコレステロール値が低い人の生存率が低くやや高めの人が高いことがわかっている。このように、臓器別診療の専門医が良かれと思ってやっていることが体に悪かったり、持病を縮める結果になることは多いにあり得る。こうした多剤併用や、特定の臓器に偏った治療をさけて超高齢社会に望ましいとされる医療が総合診療。高齢人口が少なかった頃には専門分化した高度医療の恩恵を大きかったようで大学病院が多い地域ほど寿命が高い傾向にあった。しかし高齢人口が増えるにつれ総合診療のさかんな長野県が平均寿命で日本のトップレベルで一人当たりの老人医療費は日本最低レベル。こうした医療を全国の新しい医療モデルにするべきと考え、この総合診療は専門医と違って様々な疾患に対応できる医療と定義される。最近のニュースでは厚生労働省もこの普及をはかるために看板などに記載をすることを可能にするよう検討している。高血圧、糖尿病、骨粗鬆症を患う患者が合計10種の薬を飲んでいる際にその人にとっての優先順位を考え、3、4種類の薬を選んでくれるような医療が理想で、その人の心のケアを考える。全国の大学医学部に総合診療科はできているが十分な機能を果たしているとは思えず、専門科と比べてもスタッフの数は少なく、要請できる医師も限られている。イギリスのように総合診療医と専門医の数が1対1なのが理想だが日本では総合診療医はわずか2%。大学医学部という組織では旧来型の専門医の人検疫というようなものが強いために大幅な組織や教育内容を変えるのは難しい。そうであれば市中病院で大学医学部を卒業後に総合診療医として研修ができる施設を増やすや、大学病院や大病院で専門医として従事していた医師には一般内科やかかりつけ医、訪問診療医などとして開業する際には1、2年程度の総合診療の研修を義務付け、その施設を国が用意するなどしなければ現状の高齢者はうける医療の問題点は解決しない。高齢者とて死亡率の低い血圧、血糖値、コレステロール値の悪化や調査を行っていないために実際のところははっきりしていない。日本は比較的やりやすいはずだがそういう物を調べるのには急務であり、無駄な薬を減らすことができる。あるいは高齢になると腎臓から薬物を輩出する機能がおちて肝臓で分解する機能がおちるので薬が身体に溜まりやすい。小児科であれば年齢に応じて薬の使い方をかえるのは当たり前だが高齢者が年齢に関係なく成人容量で薬が処方されるのに強い疑念をもつという。このように高齢者が増えた日本における日本の医療には問題が山積しているが大学医学部が変わろうとしないのであれば厚生労働省がイニシアチブをとって医学生や医師の教育改革を行ってほしいとした。

キーワード
厚生労働省小金井市糖尿病長野県骨粗鬆症高血圧
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