2024年10月1日放送 4:05 - 4:15 NHK総合

視点・論点
デジタル給与 何がどう変わるのか?

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視点・論点
デジタル給与 何がどう変わるのか?

デジタル給与払いとはキャッシュレス決済サービスの口座に給与を振り込むという方法で普段使っているスマートフォンの決済アプリに会社から直接給与が入金されてそのまま支払いに使用できる。日本では会社員など労働者の賃金の支払い方法が労働基準法によって定められている。実際の支払い方法として通貨で払うことが原則。昔は多くの企業が現金を給料袋に入れて労働者に手渡しで支給していた時代もあった。この現金払いという原則は今も変わっていない。しかし現在は預貯金口座振込で賃金を支給するケースがほとんどで、これは賃金の支払い方法い例外規定がもうけられている。具体的には銀行その他の金融機関の預貯金口座などいずれかに支払うことも認められている。2023年の4月に施行された改正労働基準法規則において、キャッシュレス決済のサービスなどを提供する資金移動業者の口座への支払いが追加された。これが一般にデジタル給与払いや給与のデジタル払いと呼ばれるもので、賃金は労働者にとって重要な糧だがそのために新しい例外規定としてデジタル給与払いを認めるにあたって労働者が不利益を被らないように資金移動業者に対して労働者保護や、当局への報告体制の整備など複数の要件を探った。資金移動業者は所定の要件を満たした上で厚生労働大臣の指定を受ける必要がある。2023年4月に改正労働基準法施行規則が施工され複数の資金移動業者がデジタル給与払いを扱うための申請を行った。しかし審査に時間がかかり、2024年8月になってようやくキャッシュレス決済サービスを行う1社がデジタル給与払いを扱う事業者として厚生労働大臣から指定を受けたという。最初の指定までに1年5ヶ月程度の時間を要したが、今後いよいよデジタル給与払いが指導する見込み。デジタル給与払いのメリットは労働者側はキャッシュレス決済サービスに入金する手間が省けること。実際に通常の賃金払いの方法とデジタル給与払いを比較した場合これまではキャッシュレス決済サービスを使うためには一旦資金を銀行口座に入ったあとチャージして使用する人がある。最初から給与がチャージされていればそのまま使うことができる。他には給与を受け取る日を選べるようになるなど支払時期を柔軟化させるサービスも可能になるという見方も。そうなれば労働者の利便性向上につながる。企業にとっては給与振込手数料をコスト削減にできるという。

今回指定を受けた事業者は同社のグループ銀行に開設した法人口座を使い、給与払いを行うことで通常かかる振込手数料を無料にするとした。インターネット調査会社などが実施した2023年のアンケート調査では、デジタル給給与払いについてどちらかと言うと使いたいという割合は21%程度に。年代別に確認すると20代が35%、30代が26%、40代が21%、50代が13%、60代が13%となっている。キャッシュレス決済をよく利用する若い世代ほどデジタル給与払いをしようとする意向が高いことがあげられる。労働者側に一定のニーズが存在する一方で、近年デジタル給与払いに付いて逆風も拭きつつある。1つ目は日本銀行の利上げにより預貯金の金利が上昇している点。金利上昇に伴い利子のつかないキャッシュレス決済の口座よりも利子のつく預貯金口座に給与を振り込むほうがよいという人が増える可能性も。また新たにネット銀行を立ち上げる企業が増え、その口座を給与振込口座に指定するとポイントが付与されるという入会キャンペーンを打ち出すケースも多くみられている。このような銀行の顧客囲い込み戦略はデジタル給与払いと競合する可能性がある。3つ目は今のキャッシュレス決済はスマホを操作し簡単に入金できるものが多くクレジットカードを利用すれば、ポイントが付与されるという金銭的メリットも。実際にチャージする手間が省けるという恩恵はそれほど魅力的ではないという人も。このような、課題を踏まえると資金移動業者が顧客を囲い込むためには労働者に対し利便性や金銭的メリットをいかに打ち出すかが課題。日本人はキャッシュバックやポイント還元などの金銭的メリットを重視する傾向が強く、労働者を囲い込むためにキャンペーンを実施する資金移動業者がでてくる可能性も。今後のデジタル給与払いの将来展望についてはキャッシュレス化の進展が大きなカギとなる。日本は現金志向が強いとされているが、近年日本キャッシュレス化は着実に進展している。2023年のキャッシュレス決済額は126.7兆円にのぼりキャッシュレス決済比率は39.3%となり、いずれも過去最高を更新した。現在キャッシュレス決済額の大部分はクレジットカードによるものだがここ数年QRコードやバーコードを利用するコード決済の利用が大きい。日常の少額な支払いでの使用が伸びていてデジタル給与払いは主にコード決済を提供する資金移動業者が取り扱うサービス。そのためにコード決済の利用者が増えるにつれそのサービスを提供している資金移動業者のデジタル給与払いを利用する労働者も増えていく可能性が。最も今後デジタル給与払いの利用が広がっていくためには課題もあり、デジタル給与払いを始めるには企業と労働者の間で労使協定を結ぶ必要がある。実際にデジタル給与払いを利用したいと考えていても勤務先において労使協定を結んでいなければ給与の受取方法として選ぶことができない。現状、労働者の賃金支払は預貯金口座ヘの振込で問題なく、デジタル給与払いについては費用対効果を身重に見極めたいと考える企業は多い。

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