「一帯一路」に期待を寄せてきた国の1つ・パキスタン。その一環で「中国・パキスタン経済回廊」として総額600億ドル以上のプロジェクトを進めようとしている。「一帯一路」提唱後、習近平国家主席が初めてパキスタンを訪問した際には当時のナワズ・シャリフ首相とインフラ整備を進めることで合意した。しかし大きな期待から始まった計画はいま停滞がみられる。最大都市・カラチにある鉄道はかつて運行していた環状鉄道を復活させるプロジェクトだったが、中国からの資金調達などができておらず、事業決定から6年が経つものの一部区間しか運転していない。周辺では経済特区の建設も一向に進んでいない。「事業が進まない背景には新型コロナによる両国の経済停滞に加え、元首相の逮捕や抗議デモなどパキスタンの不安定さもある」と専門家は指摘する。雇用にも影響が出ている。かつて中国語を学ぶ教室があった場所では2年前から授業が行われていない。貿易会社に勤務するウサマ・ニザミさんは中国語を学んだものの仕事で使う機会はない。中国語を使った仕事は募集する企業を見つけるのも難しかったという。中国とのプロジェクトで230万人の雇用を生むと期待されたが、去年時点での実績は23万人にとどまるとも報じられている。さらにパキスタンの対外債務の3割を中国が占めるとされ、「債務のわな」も指摘されている。しかしこうした中でもパキスタン政府は「一帯一路」について前向きに取り組む方針を崩していない。