宇都宮市などを走るLRT(次世代型路面電車)と配送用のロボットを組み合わせた実験が先月始まった。ロボットみずから公共交通機関に乗り込んで都市の郊外に荷物を届けることでいわゆる2024年問題などの課題を解決しようという取り組み。宇都宮駅の周辺を自動で走行しているのは最新技術が詰め込まれた配送ロボット。みずからLRTに乗り込んで隣町に弁当を届けようとする実験。車内では乗客の邪魔にならないよう静かに到着を待つ。この実験に挑んだのは宇都宮大学の尾崎功一教授。公共交通機関を利用した配送ロボットの実験は国内で初めての取り組みだった。尾崎教授はこれまで20年以上にわたって社会に貢献するロボットの研究と開発を進めてきた。こちらは地元栃木県を代表する特産品のイチゴを自動で収穫してくれる。尾崎教授が今取り組んでいるのは2024年問題をはじめとする物流業界の課題。特に都市の郊外では今後ネット通販を利用する人が増加し、物流の需要が増えると考えている。そこで配送ロボットがバスや鉄道にも自動で乗り込めれば深刻化する人手不足の手助けになると考えた。実験用に開発されたロボットは搭載されているセンサーに加えて街なかを飛び交う無線LANを活用し、今の位置や目的地までの経路を把握する。初めての実験では課題も見つかった。LRTの停留場に向かおうとしたロボットが突然奇妙な動きを始めた。ロボットのセンサーは人混みに入ると正常に認識できなくなることがある。事前に想定してはいたものの大勢が集まる駅や停留場を利用するにはさらに改良が必要なことが分かった。一方、尾崎教授が最も心配していたのがLRTへの乗り込み。ホームと車両の隙間を越えるにはある程度のスピードが必要だが、速すぎると乗客にぶつかるおそれも出てくる。緊張の一瞬だったが、こちらは想定以上にうまくいった。目的地を待つこと40分余り。LRTを降りたあとは青信号を待って横断歩道を渡り到着。14キロ離れた隣町までおよそ1時間をかけて弁当を届けることができた。尾崎教授は今回の実験をもとにロボットの性能をさらに高め、5年後をメドに実用化を目指したいと考えている。尾崎教授は実用化には技術開発に加えて法律の整備や市民の理解なども必要になるとしていて、そうした取り組みが社会全体で進むことに期待を寄せていた。