三岐鉄道の伊勢治田駅では佐藤ゆり子さんが駅員をしながら、夫と駅舎で生活している。切符や定期券の販売、売上金の管理などをしている一方、夫の直志氏は運行管理、ときには運転士も務める。2人は首都圏のスーパーマーケットで働いていたが、結婚から7年後、直志氏は運転士になりたいと夢を告白した。ゆり子さんは背中を押し、入社が決まると縁もゆかりもない三重へ移住。会社から「駅に住んでもいい」と言われると、ゆり子さんは「住めるんだったら」と思ったという。明るく元気に声を出す、笑顔で接していると地元の人々と声を交わすようになったが、駅員と利用者というドライな関係から脱することができずにいた。ある夜、男子高校生が「キーホルダーを無くしてしまった」と駅舎にやってきた。業務時間外だったが、ゆり子さん、直志氏が必死に捜索。それでも、見つかることは無かった。翌朝、高校生が感謝してくれ、部活やテストのことなど色々と話してくれるようになった。ゆり子さんは頼りにされるおばちゃんにステップアップしたと感じたという。