中外製薬は2002年10月にロシュと戦略的アライアンスを結んだ。ロシュは中外製薬の株式の過半数を保有している。中外製薬はロシュの子会社となったが経営の独立性は維持。新薬の販売、開発はロシュとの相乗効果でロシュグループに入る前と比べ売上は7倍、営業利益は17倍に達している。新薬開発のためどのような投資戦略を打ち出すのかCFOに聞く。東京・日本橋に中外製薬の本社がある。中外製薬CFO・板垣利明さん。財務やマーケティング部門などでキャリアを重ね2018年にCFOに就任した。中外製薬の業績は2022年12月期に初めて売上が1兆円を突破。次の中期経営計画でどの水準を目指すのか気になる。中外製薬は2020年に終了した中期経営計画を最後に中計を廃止。中計を廃止したうえに2030年までの長期経営計画でも売上や利益に関する数値目標は示していない。際立つのが「自社グローバル品、毎年上市」の文字。上市は新薬が承認され市場に出回ること。中外製薬は直近の10年にグローバルで上市した新薬は3つ。それを2030年には毎年1つ新薬を上市できる体制を確立するという目標。ことし 4月に稼働したばかりの研究拠点でDXの新たな取組が始まっている。ロボットにより人がいない深夜でも実験が続けられる。AIを使って新薬の候補を探し出すソフトウェアも自社で開発した。こうした研究開発への投資を支えているのが営業利益率の高さ。国内の売上トップの武田薬品工業が30%以下なのに対して中外製薬は38.7%。高い利益率の背景にあるのがロシュとの提携関係。日本国内では中外製薬が研究開発費を負担、グローバルで開発する部分はロシュが負担している。中外が開発した新薬を中外自ら売るのは日本、台湾、韓国。それ以外はロシュがグローバルで販売。2023年6月末時点でのネットキャッシュは6650億円と3年前の倍以上。力を入れているのが中分子医薬品。副作用が少ない医薬品を少ないコストで開発できる可能性があり、抗体医薬と低分子医薬品に続く第3の柱に育てたい考え。中外製薬は約750億円を投じて中分子医薬品などの原料を製造する工場を建設中。2017年から取り入れている指標がROIC、36%。この水準を維持、向上させていくか。設備投資を増やす。ここから毎年薬を出すことがどこまでできるのか問われている。