建築部門の受賞者は坂茂さん。周囲の環境を活かしながら斬新なフォルムを持った建築物を手掛けてきた。下瀬美術館の「紙の家」の建材には紙管が使われた。軽いのに強くて価格も安く、温もりのあるフォルムが居心地の良さを生み出す。紙管を使いだしたのは駆け出しの頃。家具の展示会場の内装にFAX用紙の芯を木材の代わりに使った。本格的に紙管を建材として使おうとした時にルワンダ内戦の様子を目にした坂さんは自らルワンダに行き、紙管でシェルターを作った。活動を通して坂さんは特権階級の仕事だけをすることに虚しさを感じた。阪神・淡路大震災で建物が崩れて犠牲者が出たことから建築家の責任を感じ、神戸で紙管を使った仮設住宅作りに奔走した。東日本大震災でも集会場の建築に紙管を活用した。能登半島地震では珠洲市に向かい、長く住めるよう紙管ではなく木を活用した。能登では損壊した古民家などの能登瓦を復興建築に利用する取り組みも始めた。