マイナ保険証。マイナンバーカードと健康保険証を一体化したもの。国は来月2日に健康保険証の発行を止めて、このマイナ保険証に原則移行することにしており、10日を切った。国が移行の目的の一つに挙げているのが電子処方箋の導入。マイナ保険証を使えば処方箋の情報を電子化することができる。複数の医療機関や薬局がすぐに情報を共有できるようになる。医療機関が重複して薬を処方することなどを避けられるなどのメリットがある。さらに今までのように薬局に紙の処方箋を持っていく手間が省けるし、処方薬の情報を管理するお薬手帳も必要なくなるが、電子処方箋をめぐって現場からは「医療の充実につながる」という声が上がる一方、課題も見えてきている。山形県酒田市の病院。マイナ保険証の利用が進み、利用率は全国平均の2倍ほどの3割に上っている。マイナ保険証を利用した電子処方箋は、おととし10月から先進的に導入している。薬が二重に出されたり、一緒に飲んではいけない薬が誤って処方されたりするのを、これまでに1300件ほど防ぐことができた。さらに、医療機関が限られる地方でニーズが高まるオンライン診療でも、今後電子処方箋の導入が進めば近くの薬局で薬を受け取ることが可能になり、さらに利便性が高まるという。病院の運営法人・島貫隆夫理事長のコメント。東京・北区のクリニック。4月に電子処方箋を導入し、院内のデータを管理するシステムなども改修したが、伊藤博道院長は「現時点で312万100円という見積もり」と語る。さらにメンテナンスなどに110万円がかかり、それとは別に毎年50万円余りが必要になる。こうした費用やセキュリティーの問題もあり電子処方箋の普及は進まず、全国の医療機関薬局のうち導入しているのは18.9%にとどまっている。こちらのクリニックでも他の医療機関で整備が追いついていないことから、せっかく導入してもこれまでに一度も利用されていないということ。国は費用の補助など普及拡大に努めたいとしている。