静岡・牧之原市の沖合で揺れるのはカジメという海藻。海藻が集まり藻場と言われるこうした場所が脱炭素の切り札として注目されている。海藻などの植物は陸上の植物と同じように光合成で二酸化炭素を吸収。藻場などで海の植物が取り込んだ炭素はブルーカーボンと呼ばれている。陸の植物の場合は枯れると取り込んだ炭素が大気に放出され二酸化炭素に戻ってしまう。一方で海洋植物は枯れた後も一部が海底に残るため数百年単位で炭素を取り込むことができると言われている。牧之原市などの沿岸では一度消滅した国内最大規模の藻場を地元の漁師などが復活させる取り組みを進めている。国が認可する研究組合JBEは回復した藻場の一部を二酸化炭素の吸収源として認証「Jブルークレジット」を発行。Jブルークレジットは海の生物による二酸化炭素の吸収量を企業などに販売できるようクレジット化したもの。クレジット購入した企業などはその分の二酸化炭素を自分たちが削減したとみなすことができる。漁協の薮田組合長は「クレジットを販売して約300万円の収入になった。さらなる藻場の回復のためにこの貴重な資金を使いたい」と話した。静岡県も近年はブルーカーボンを増やすことを大きな目的の1つにしている。静岡県水産・海洋技術研究所の清水さんは「日本は周囲を海で囲まれた島国なので内陸の国に比べてポテンシャルを秘めている。県全体で脱炭素社会に向けて動いている。水産分野は炭素吸収源として海藻を増やして保全することが重要」と話した。二酸化炭素を吸収する海の植物を増やし、クレジットの取り引きを大規模に進めていくことが、カーボンニュートラルの実現を加速させる力となりそうだ。