大阪府内の飲食店で働く男性は「田中一」と名乗っている。今年7月以前の記憶がなく、本当の名前がわからないためだ。7月上旬、田中さんは島根・奥出雲町の国道沿いの茂みで目覚めた。田中さんは「頭が痛くて目覚めた。カバンが倒れていた。サイフはからっぽ」という。身分証、携帯電話はなかった。カバンの中には衣類、メガネ、保存用ポリ袋に現金60万円があった。2カ月記憶を探す旅をした。記憶が戻るまで待つことにして野宿生活3週間。大阪のグリコの看板、富士山など断片しか思い出さなかった。8月上旬島根県警に相談、出雲署は「やるべきことはやったが身元は分からなかった」という。八月中旬、大阪・ミナミへ。ナイフがカバンから出てきて逮捕された。記憶喪失の状況を説明し、福祉団体が身元を引き受けた。現在飲食店でアルバイトをしながら暮らしている。当時の髪型のままにしている。田中さんは「よいこと、わるいことがメディアに出ることであると思うが、自分のことを知っている人を探す方法に頼るのが一番だ」と話した。
