先週フィリピンを訪れた岸田首相が強調したのは警戒管制レーダー。今回の会談の直前に1機目の運用が始まった。その現場にNHKのカメラが入った。フィリピン・マニラから車で5時間、南シナ海を望むフィリピン軍の基地。監視するのは沖合の中国などと領有権を争う一帯。このレーダーの導入でこれまで把握できなかった動きを監視できるようになったという。導入したのは航空自衛隊のレーダーなどを製造する日本の大手電機メーカー。フィリピン軍の要求を基に新たに開発した。2014年に策定した今の装備移転三原則に基づき官民で取り組みを進め、今回は完成品として初めての輸出を実現させた。背景にあるのが中国の海洋進出。中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張し軍や海警局などの活動を活発化。領有権争いがある海域に次々と人工島を造成し、一帯の軍事拠点化を進めている。軍の能力強化に支援を求めるフィリピン、中国の軍事的影響力の拡大に危機感を共有する国々との連携を強めたい日本。両国の思惑が一致した安全保障分野での協力は今後さらに深まるとみられている。岸田首相は今回の狙いを地域の平和と安定への貢献と強調している。また、政府は装備品の移出を通じて日本の防衛産業の育成にも繋げたい考えだが、輸出できる装備品を広げて更に促進すれば風葬助長しかねないと慎重な意見もある。他国の安全保障にどこまで関与していくのか今後より透明性の高い議論が求められる。