2023(令和5)年に89歳で亡くなった俳優の財津一郎さんは、甲高い声の独特なギャグで知られ、テレビ・映画・ミュージカルと幅広く活躍した。昭和9年に熊本県で生まれた。財津家は阿蘇に広大な土地を所有する地主だった。農林省に勤める父の転勤で幼少期を東京で過ごした。父に連れられて訪れた浅草六区の興行街で見た「マイ・ブルー・ヘブン」を歌った映像を紹介。戦況の悪化に伴い、熊本に疎開し、11歳で終戦を迎えた。父はシベリアに抑留され、所有していた土地のほとんどを農地改革で失った。残されたわずかな土地を母と耕す苦しい生活が続いた。高校ではコーラス部や文化祭の演劇で活躍した。多くの演劇人を生んだ早稲田大学を目指して上京したが、受験に失敗した。実践で行こうと帝国劇場のコーラスボーイになったが映画館に変わってしまった。その後も行く先々が全部つぶれてしまったという。昭和37年に吉本興業に入社したが、もがき苦しむ日々が続いた。29歳でテレビ番組「てなもんや三度笠」に出演して全国区となった。40代半ばになるとミュージカルの仕事が次々と舞い込むようになった。平成7年に脳出血で倒れたが、翌年の大河ドラマ「秀吉」で復帰。常に熱い血をたぎらせ、自分の夢を追い続けた89年の人生だった。根アカこそ神が人間に与えたもうた最高の武器であると語っている。
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