今日は寺地はるなさんの「わたしたちに翼はいらない」を紹介する。とある地方都市を舞台に過去に囚われたまま生きる3人の人生が絡みあうサスペンスになっている。園田はマンションの最上階から飛び降りようとするが、自分が震えていることに気づき、中原大樹を殺してから死のうとなる。ことの始まりは中学時代に園田をいじめていた大樹と再会したことだった。大樹は園田をいじめていたことを覚えていなかった。園田が「あいつを殺してから死のう。」というシーンはどういう思いで執筆したか寺地さんに聞くと、「それに近いことが何度かあった」などと話した。大樹の妻の莉子も大樹の死を願っているという。莉子はクラスの王様だった大樹と中学の頃から付き合い結婚した。娘も生まれたが大樹の浮気と高圧的な態度から逃げたいと思うように。そしてシングルマザーの朱音は莉子と同じ保育園に娘を通わせている。彼女はいじめが原因で人と深く関わることを避けるように生きてきた。ある日、心のバランスを崩し今にも倒れそうな園田を見かけ思わず手を差し伸べる。ここから3人は救いを求め影響し合う。寺地さんに一番軸にしたかったものを聞くと「許せないことは許さなくてもいい」などと話した。寺地さんの強い想いが込められたのが大樹を殺したいと打ち明けた園田に対し朱音が自らの想いを口にするシーンだという。「雲に届くように高く飛べ、きみには翼がある」、それはいじめを受ける朱音に教師がかけた励ましの言葉だった。その日から朱音は平気なふりをしてやり過ごすようになった。寺地さんは「自分が受け入れがたいときは受け入れなくいい、その気持ちをタイトルに込めた」などと話した。松元さんは読んでみて「気持ちが軽くなったし人間関係が楽になると思う」などとコメントした。