「前橋空襲」をテーマにしたミュージカル“灰になった街”を演じるのは全て一般市民で、小学生から60代の63人だ。主演の柄沢育希さんは普段は看護系の正門学校に通う19歳だ。地元の空襲を伝えたいとオーディションに参加したところ、親友や恩師を失った女学生役に抜擢された。柄沢さんには身近に空襲を体験した人がおらず、聞いたこともない空襲をどう伝えるかもがき苦しんできたという。稽古を続けて1年、支えてくれたのが母親役の佐々木英子さんだった。父親が空襲の体験者だという佐々木さんは父親が亡くなるまで大切に持ち続けてきた物を通してその思いを受け継ごうとした。3時間の演技を終えた柄沢さんは空襲を知らない自分でも語り継いでいくことはできると思いを新たにしていた。