「普通の国は物価も賃金も当たり前に上っていく世の中で、日本も昔はそうだったわけですよ。バブル崩壊以前は普通に物価も上っていたしお給料も上っていた」と語るのは、第一生命経済研究所で首席エコノミストを務める永濱利廣さん。長年世界の経済を研究してきた永濱さんは、実際に物価・賃金が上っている国にはある循環が起こっているという。企業が値上げを行い物価が上昇、企業の利益も増加し、賃上げ・消費の活発化に繋がる。経済が成長するアメリカなどではこうした好循環「インフレスパイラル」が起こっているという。日本もバブル期頃までは物価・賃金が上昇し続けたというが、それも過去の栄光。永濱氏はこれまでの日本の状況について「まず景気が悪くなって企業はモノが売れなくなる。そうすると売るために値下げする、売れても儲けが減って働いている人のお給料が減る。給料が減ったら購買意欲が下がってモノを買わなくなる。そうすると企業がまた儲からなくなる。これがデフレスパイラル」などと話す。このデフレスパイラルは景気の波によってどの国でも起こり得るが、日本の場合は異例だそうで、「こんなに20年以上デフレを放置した国はない」「勢いがある日本企業も減ってきている」とのこと。実際に1989年は企業の市場規模世界トップ50に30社以上の日本企業がランクインしていたが、2023年現在はトヨタのみとなっている。そしてデフレ状態が長引くと世界から取り残された状態になるという。長らくデフレが続いたことで世界から置き去りにされた日本。この状況を打破することはできるのか。今が正念場という日本経済。そして永濱氏も「明るい兆しが出てきているのは確か。いま非常に厳しい状況だが、逆にそれは飛躍のチャンスも近づいているという局面。理由は良くないかもしれないが、コロナや戦争で値上げせざるを得なくなった。賃金上昇が物価上昇を上回ることになれば展開は変わってくると思う」と話す。さらに経済浮上に向けた具体的な動きもすでに見えてきているそうで、「いまは円安ですごく苦しいが、むしろチャンスで工場などがたくさん日本に戻ってきやすくなる。生産許与点がどんどん戻ってくれば非常に大きなチャンスになると思う」とのこと。実際、今年3月に内閣府が発表した企業を対象にした調査では、海外で現地生産を行う企業の割合が前年度と比べて減少し、企業の国内回帰の傾向が高まってきていることがわかった。製造業の国内回帰が起こると新たな雇用が生まれるなど、地域経済の浮上に繋がり経済が上向くきっかけになるという。そして苦しい今を乗り越えることで日本経済は大きく飛躍できるという。