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「新制作展」 のテレビ露出情報

鈴木さんは秋の展示会を控え、作品の制作に取り組んでいた。武蔵野美術大学で油絵を学び、写生のため日光を訪れた時、閉山直後の足尾銅山に立ち寄った。足尾では工場から排出された亜硫酸ガスで山には木も生えず、岩肌がむき出しになった光景が広がっていた。当時、両親と死別してから日は浅く、鈴木さんの荒んでいた心は荒れ果てた山々と重なるところがあったという。黒と白のコントラストを強烈に打ち出した作品は展覧会で受賞、入選を重ねることとなった。だが、初めて春を描いた「浅春の足尾製錬所」で、油絵の恩師から酷評され、鈴木さんは筆を動かさず、足尾の景色を見続けた。町役場の働きかけにより、銅山関係の工場に入ることを許してくれるようになった。鈴木さんが描いた工場の多くは取り壊されているが、親交のある久能正之氏は作品を通して、かつての足尾を思い出し、懐かしさに浸ることができるという。
鈴木さんは通洞選鉱所跡に足を運び、関係者から説明を受けた。かつては心の深奥から湧き上がる思いのままに絵筆を動かしたが、人々との交流を重ね、「地味であっても奥深い、そういうものを表現した作品を仕上げたい」などと話す。足尾銅山で働いていた星力氏は鈴木さんの作品の変化を感じ取っていて、最初は白黒が強く、社会派を謳っているのかと思っていたという。だが、次第に色使いの変化、ぬくもりを感じていった。さらに作品に描かれた景色の多くはもう観ることが叶わず、鑑賞者は作品を介して懐かしさを覚えていた。
新作では残された選鉱所、鮮やかな緑が広がる山を描いていた。実は4年前、鈴木さんは間質性肺炎と診断されていて、医師からは「絵の具、オイルが原因で肺がうまく酸素が取り込めなくなっていく」と指摘されている。完治はできないなか、これまでにない作風に挑むことができ、鈴木さんは「まだまだ足尾は深いと思う。描くものはたくさんあり、描かなくちゃならない気持ちもある」などと語った。9月下旬、新作「足尾の今-2023」がお披露目された。銅山を経営した会社に勤める久能氏、宮川会長は足尾の風景の変化とともに鈴木さんの心境、色彩の表現も変わっていると感じていた。現在、足尾に記念館を建設中で、鈴木さんの絵を展示する予定だという。星氏は「鈴木画伯の描かれた絵は足尾の大事な財産」、「今はなくなっちゃってるけど、画伯が証として残してくれた」などと語った。

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