白杖を使って歩く視覚に障害のある男性が目的地へ向かっていると、スムーズに道を左折した。その秘密は、足についている黒い装置。この装置は“道順や進む方向を靴の中を振動させることで伝えることができる”自動運転の技術を駆使した歩行ナビゲーション「あしらせ」で、アプリに目的地を入力すると、直進・右折・止まれなど、足からの振動で道案内をしてくれる。この「あしらせ」を開発した千野歩さんは「(視覚障害者の方は)安全に集中していたら、いつの間にか迷っていたとか、駅のホームに落ちてしまうとか、事故に遭ってしまったとか」と話す。目が不自由な方にとって、音は重要な情報源。スマホを使い、音で道順を確認すると、耳からの情報が遮られてしまう。そこを振動に変えることで、転落事故などを防ぐことにもつながるという。視覚障害のある男性は「左の振動が細かくなってきたので、左に曲がります。我々、目標物が見えませんから、耳以外の感覚で伝えてもらえるのは、すごくありがたいですね」と話す。開発のきっかけになったのは家族の転落事故で、千野さんは「(視力が落ちていた)妻のおばあちゃんが、歩いていて川に落ちて亡くなった」と話し、その経験から、転落事故などを防ぎながら“歩くことへの安心感を与えたい”と開発を続けている。千野さんは「(世界中で)同じような課題を持つ方が非常に多くて、非言語の製品“振動”で世界の視覚障害者の方へ届けていきたい」と話す。