2024年3月、寿司店を営む会社の入社式が行われた。板前修業に飛び込むのは経歴も年齢もバラバラな人たち。率いるのは、板前歴35年・社長の阿部浩さん(53歳)。阿部さんの店は現在都内に7店舗。年商16億円を誇る人気寿司店。阿部さんの元には、全身入れ墨がある人やハンディのある障がい者など、さまざまな経歴を持つ人からの応募が来る。さらには、児童相談所から紹介されることも。居所があれば過去は問わない。阿部さんは多くの弟子を一人前に育て上げ、独立も応援している。そんな阿部さんには、最近、特に気にかけている板前がいる。サワさん(31歳)だ。このところ、無断欠勤を繰り返している。地元・東北の高校を卒業後、寿司職人を目指して上京したサワさん。店では中堅どころ。板場を任されている。その腕前は阿部さんにも認められている。コツコツと仕事をこなすタイプだが、いじられキャラという一面も。この日、サワさんは、出勤から3時間後、体の痛みを訴えて板場を離れてしまった。店は他の板前に任せ、阿部さんはサワさんと病院へ。サワさんは通風を患っていた。無断欠勤をしたばかりなのに、また休むことになってしまった。情けないと泣くサワさんに対し、阿部さんは「見捨てないから大丈夫だよ」などと声をかけた。サワさんが欠けた店舗では他の従業員に負担が行っていた。さらに、阿部さんを悩ませる事態が発生。勤務日数が減り、給料が下がったサワさんは、家賃を滞納していたのだ。サワさんが滞納した家賃は阿部さんが建て替えることに。仕事ができない場合は退去するという条件付き。