2023年9月6日放送 19:30 - 19:59 NHK総合

クローズアップ現代
迷って悩んでいいんです 注目される“モヤモヤする力”

出演者
桑子真帆 
(オープニング)
迷って悩んでいいんです 注目される“モヤモヤの力”

効率性を重視するタイパが流行し、生成AIが登場した時代に真逆の概念が注目されている。「ネガティブ・ケイパビリティ」はモヤモヤする力こそ大切だという考え。ビジネスや教育・医療・法律など幅広い分野で取り入れられている。村上春樹やイチローなど各分野のトップランナーたちもこうした考えを重視している。

キーワード
イチロー村上春樹
オープニング

オープニング映像。

迷って悩んでいいんです 注目される“モヤモヤする力”
迷って悩んでいいんです 注目される“モヤモヤの力”

モヤモヤする力は、すぐ結論を出さずモヤモヤし続けることが力だという考え方。看護職のマニュアル、入試問題、裁判所の採用試験などで取り入れられている。

ヨガインストラクターの尾石晴さん。尾石さんのレッスンは少人数で雑談をしながらの雑談ヨガ。意識しているのはあえて答えを出さずに参加者のモヤモヤに寄り添うこと。3年前まで外資系企業で管理職をしていた尾石さん、重視していたのはいち早く答えを出すこと。非効率な人にはイライラすることもあったという。しかし、出産後に仕事と育児を両立するようになり、効率を追求してもうまくいかない日々にジレンマを感じるようになった。その最中に知ったのがモヤモヤする力の考え方。無理に答えを見つけようとしなくていい、悩みの中にこそ生きる意味があるという考え方にハッとしたという。そしてはじめたのがモヤモヤノート。生き方や人間関係などのモヤモヤを書き出している。

那須かおりさんは生まれつき聴覚に障害があり、人工内耳をつけている。子どもの頃から聞こえる人たちの世界にも入れず、口話で話すため手話を使う人たちの世界にも馴染めずにいた。大学院進学のときにうつ病になり、30代では自殺も考えた。絶望の中でモヤモヤする力を知り、自分はありのままでいいと思えるようになったという。

世界ではモヤモヤする力の調査研究が相次いでいる。ビジネスの分野ではモヤモヤする力を発揮できる人の特徴や強みなどの分析が進んでいる。日本でもどんな人にモヤモヤする力があるのか調べる研究が始まっている。大阪大学の大達亮さんが調べているのは、入院患者に向き合う精神科の看護師たち。すぐに成果が出にくい現場で看護をする人たちをモヤモヤする力があると見込んで聞き取りをしている。これまでに11人を調査して、モヤモヤする力がある人は人と協働する経験や自分を変えていく柔軟性が備わっている可能性が見えてきた。成果主義への疑問があると指摘する人もいる。小説家の帚木蓬生さんはモヤモヤする力は混迷の時代にこそ進化を発揮するという。この考えがはじめて登場したのは19世紀初頭。イギリスの詩人がネガティブ・ケイパビリティという言葉を家族にあてた手紙に綴っていた。当時のヨーロッパは戦争の時代。先の見えない中で結核や赤痢なども蔓延していた。そして今、再び先の見えない苦難に直面している。

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大阪大学

枝廣淳子さんは今の時代にモヤモヤする力が注目されているのは、今は複雑で不透明で先行きが見えない時代であることだという。モヤモヤする力にはどんな可能性があるのか、ある実験を行った。不確実な状況に対してどう振る舞うのか調べるIUという心理テストでモヤモヤする力の度合いを調べた。23人のうち、度合いが高い人と低い人でチームを作り課題に取り組んでもらった。

斬新なアイデア次々と…“モヤモヤの力”の可能性とは

モヤモヤする力の度合いが高いチームと低いチームでそれぞれグループディスカッションをしてもらう。議論を心理学の専門家に分析してもらう。時間無制限、休憩・スマホ等の情報収集はOKという条件。低いチームは枠付けから議論を開始、高いチームは自由に議論を進める。開始から32分、低いチームは全員がスマホを使いはじめた。開始から1時間、高いチームは休憩に入った。その間に低いチームは議論が一つのアイデアにまとまってきた。低いチームは1時間22分で議論が終了。高いチームは議論が続いている。2時間が過ぎたとき、アイデアがあふれ出した。高いチームの議論は3時間近くも続いた。

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筑波大学
迷って悩む“モヤモヤの力” 知られざる可能性とは

モヤモヤする力には創造性・アイデアを伸ばす可能性が見えてきた。枝廣さんはモヤモヤする力は答えを急がない勇気でもある、より良い答えを出すためにすぐに答えを出さないことだという。モヤモヤする力を現代社会で生かすにはモヤモヤとテキパキの両輪が必要だという。

“モヤモヤ”と“テキパキ” 両立で景色が変わる!?

九州大学の高田仁さんは研究に加え、大学の運営など複数の仕事を抱え、以前は精神的に苦しんでいたという。そこではじめたのが、午前と午後で真逆の働き方をすること。午前中はモヤモヤタイム、すぐに答えの出ない課題を考える時間。午後は問題解決タイムで結論を出すことを重視している。

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九州大学
悩みや迷い どう生かす “モヤモヤの力”と社会

枝廣淳子さんはモヤモヤ力を伸ばすには、あえて判断を保留にする、5分でもOK。結論後もモヤモヤしていいと考えるといいと話した。社会の中でモヤモヤする力が根付いていくことについて、枝廣淳子さんは短期的に考えた結果、色んな環境問題が起きている。経済も大事だが効率主義になってしまったことが環境問題や社会問題を作っている。判断を保留にする力が人類のこれからを握っていると話した。

“すぐに答えが出なくても” モヤモヤの先には…

大人の積み木教室。何をどうつくるのか正解はなく全てを自分たちで考える。3時間ひたすらモヤモヤする。出来上がったのは巨大なタワーを中心とした街並み。自分たちの想像をはるかに越えたものだった。

(訂正)
訂正

4月に放送した「広がる女性のひきこもり“孤立”をどう防ぐのか」で内容の一部に誤りがあった。VTRで紹介した女性について「働きたいと思ってもその一歩が踏み出せていません」とお伝えしたが、女性は放送当時、企業に就職して働きたいという意向は持っていなかった。「仕事をしていない自分を肯定しようと掃除だけで1日6時間を費やしていた」と伝えたが実際は掃除だけでなく掃除を含めた家事を過去に1日6時間行っていた。

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