週刊フジテレビ批評 The批評対談
ゲストに「侍タイムスリッパー」の監督である安田淳一、「カメラを止めるな!」の監督である上田慎一郎が登場。「侍タイムスリッパー」の撮影裏話「苦労話1 安田さんが1人11役以上!?」では、安田が担当した役割は監督・脚本・原作・撮影・照明・編集・整音・タイトルデザイン・現代衣装・車両・制作だと紹介。安田らはできる限りでできる範囲を広げることでコストダウンに繋げてきたなどと語った。上田らは自主制作あるあるであり、自主制作では美術・衣装がつかないことが多く、自分の場合にも衣装を妻と一緒に担って制作したなどと明かした。
「侍タイムスリッパー」の撮影裏話「苦労話2 預金残高7000円!?」では、自主制作でまとめた支払いをすることがあり、支払いながら予算が足りているか不安であったがギリギリ足りたなどと安田が明かした。安田は「侍タイムスリッパー」では2600万の総予算がかかったが、「カメラを止めるな!」は300万円と最高のコストパフォーマンスで制作された映画であり、自分では10倍の予算をかけなければ肩を並べる作品を制作できなかったなどと伝えた。上田は「カメラを止めるな!」の制作では廃墟にトイレがなかったため仮設トイレを配置し、それが一番高いコストであったなどと語った。
「侍タイムスリッパー」の撮影裏話「苦労話3 出演者とケンカも!?」では、安田は主演の山口馬木也を始め出演者達も作品へ思い入れを強くしてくれており、俳優たち各々がやりたい表現と、ぶつかって話し合いが発生し、一方では撮影現場のレンタル代などもリアルタイムで計算しなくてはならないなど自分が一杯一杯で出演者たちへの指示も雑になったこともあるが、「作品を面白くしたい」という目的があるなかでのことで、振り返れば互いに笑って思い出せているなどと打ち明けた。上田は、商業映画では撮影が終えると舞台挨拶まで一旦キャスト陣とは会わなくなるものの、「カメラを止めるな!」では撮影後もキャスト陣も含めてどうやって宣伝していくか話し合い続け舞台挨拶を迎え、まるで部活動みたいだったなどと話した。安田は自主映画だけではないであろうが同じ映画に何度も足を運んでくれるファンもいるなどと語り、上田はそうしたファンによるコミュニティもできて「カメラを止めるな!」ではファン同士が何組も結婚し、自分が保証人になったケースもあるなどと明かした。
自主映画制作であるからこそできることについて、上田らは納期がないため粘り続けられることが最大のメリットであり、自分の場合には関係者試写当日の朝まで編集していたこともあるものの、ある時のQ&Aでは納期が最も大切だと回答しており、それは情熱や愛が映画制作を始めされてくれるが納期がなければ終わらせてはくれないものであり、多くの自主制作者は出口を決めきれないまま走ってしまっているなどと語った。安田は映画監督の一方で米農家でもあるが、米農家で生計を立てて映画を制作しているという認識は間違いであり、米作りも赤字と隣合わせでやっていて映画がコケれば次の年の米は作れないと考えていたなどと述べた。
自主制作映画が観てもらいやすい環境になってきているかについて、上田らは共に観てもらいやすい環境になってきていると言えるとし、SNSなどで宣伝費をかけずに知恵と工夫で発信可能であり、「侍タイムスリッパー」や「カメラを止めるな!」のような成功前例ができたのもあって大手配給会社も自主制作映画に投資しやすくなるなどと語った。安田は「カメラを止めるな!」の成功は、しっかりとした計画を立て、様々な人に助力を借り、幸運にも恵まれれば再現性があるものなのだと伝えることが自分の役割であり、今のインディーズで頑張っている人たちの希望になってくれたらいいなどと伝えた。上田が最新映画「アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師」を告知した。