人をみる医療…新たな命を守る

2025年7月11日放送 22:46 - 23:02 テレビ東京
ガイアの夜明け 地域の医療を守れるか?

対照的な事実もあり、部屋にひしめく看護師たちは皆二十歳前後。まだまだこれからの人材だが、窮地に立つ病院には大きな救い。彼女たちにはある共通点があった。病院の隣にある看護学校、彼女たちはその卒業生たち。全国的な看護師不足の中、至誠会第二病院は採用に困らないという。人材確保は病院経営の鍵、医師の採用に関してはかつて痛い目にあっている。産婦人科は大学の医局出身者に頼りすぎた結果、医師不足で1年間クローズした。その後、再開したものの手がける出産は激減し、全盛期の10分の1以下の月に3件ほどになっている。そこに現れた救世主、産婦人科医の福田奈尾子さん。目を見張る経歴の持ち主で、東京大学大学院 医学系研究科の出身。3年間の専門研修プログラムを経て、救急科専門医の資格に合格。その上、集中治療科専門医の資格も取得した。病院からすれば垂涎の人材。彼女がここに来たのは、医師の公募。医局に偏りすぎたかつての採用を改め、広く門戸を解放した。福田先生は偶然、病院の近くに住んでいたためそれが縁だったという。元理事長の時代には50%程だった医局の出身者が、今では25%にまで減っている。
5月中旬、福田先生のもとにタンザニア出身の夫婦がやって来た。夫のフレディさんと妊娠9か月目のルルさん。ルルさんの不安げな様子にはわけがあった。フレディさんは日本に来て10年以上、こちらで仕事にも就き日本語もできる。しかし妻のルルさんは来日2年目、スワヒリ語と英語しか話せなせず、今回が初産で不安だらけ。すると診察で、福田先生は流暢な英会話で応対、ルルさんの表情が一気に緩んだ。さらに先生が用意したのは、イラスト付きの英会話カード。英語が話せないスタッフのために手作りしたという。英語の他に、ネパール語やベトナム語もあり、国際化に対応しようというアイデアだった。患者本位の医療へ、新たに経営陣に承認された試みも。ほとんど使われていなかった病室を有効利用、妊婦と夫が一緒に過ごせる部屋に模様替えする。年代物のソファーセットは今風のダイニングテーブルにするつもりで、妊婦が快適に過ごせる部屋を目指す。
6月、ルルさんの出産予定日が近づく中1つ大きな気がかりがあった。体調の不調を訴えるルルさん、診察すると初産の女性には大きすぎる胎児で母体の負担が心配だという。福田先生はあえて、夫のフレディさんに日本語で状況を伝え、それをフレディさんが訳してルルさんに伝える。フレディさんの言葉の方が優しく伝わり、余計な不安を掻き立てないと判断した。福田先生は一言だけルルさんに「心配しなくて大丈夫」と声をかけた。この日から、ルルさんは入院。模様替えをした部屋は1泊2万7500円、夫のフレディさんも一緒に泊まる。夫と一緒にいられるだけでも、ルルさんの安心度合いは計り知れない。
出産予定日から1週間後、福田先生は決断を下す。自然分娩から帝王切開に切り替えることにした。救急専門医でも集中治療医でもある福田先生、これ以上長引かせるとリスクが増すという判断だった。自らメスを握り15分後、元気な男の子が誕生した。母子共に健康、家族の喜びは医師の喜び、そして病院の喜び。病院再生への歩みの中で、無事に生まれた新たな命。医療は誰のためにあるのか、病院再生はまだまだ始まったばかり。


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至誠会第二病院東京大学大学院医学系研究科至誠会看護専門学校

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