クローズアップ現代 家が高すぎて買えない バブル超え“住まい高騰”の舞台裏
住宅価格の高騰は全国的に広がっている。東京23区の新築マンション平均価格は去年1億円を超えて1億1483万円。
2月に販売がはじまった東京・世田谷区の新築マンション。最寄り駅までは徒歩8分。68平米の部屋の価格は1億2000万円。マンションの価格は土地代と工事費に利益を加えた金額。工事費は資材価格の上昇や人手不足などの影響で3年前と比べて2割以上増加している。土地代も上がっているため、販売価格も上げざるを得ない。高い価格帯で勝負するためのカギが高付加価値。物件の魅力を高めれば1億円を超えてもすぐに買い手がつくという。購入者は世帯収入の多い共働きの夫婦や富裕層。株価の上昇などを背景にこの10年で急増している。デベロッパーの間では高所得世帯の心をつかむための競争が激化している。部屋から見える桜がウリのこの物件は最も高い部屋は2億円。工事費や土地代の上昇を背景にした高付加価値の販売戦略、それを飲み込む高所得世帯のニーズ、その相互作用が価格高騰のスパイラルを生んでいる。
さらに、資産運用を目的としてた投資がマンション価格を押し上げている。会社経営の傍ら不動産投資を手掛けるKさんは10年ほど前からタワーマンションを中心に投資を始め、その額は30億円規模。日本の不動産の投資総額は日銀の大規模緩和以降、大幅に増えた。不動産評論家の牧野知弘さんはこうしたマネーの多くが東京の不動産に集中していると指摘する。工事費などの上昇が生み出すスパイラルは投資マネーが加わることにより、さらなる価格高騰を生み出している。
きのう町開きをした晴海フラッグ。土地を所有する東京都は長期の居住をみすえた良質な住宅を提供するとし5600戸余りのマンションを計画した。購入希望が殺到し、抽選の最高倍率は266倍になったため、1人2戸までの申し込みに制限する事態となった。今年1月、いち早く完成した分譲マンションで入居がはじまった。しかし4ヵ月後、多くの部屋で明かりがついていない。登記簿を入手して分析すると、ある1棟は4割以上を法人が取得していることがわかった。4分の1以上を法人が保有、1社で38戸取得していた。投資家のKさんも法人名義で複数の部屋を購入した1人。申し込みの制限が入る前に3つの部屋を取得した。それらを賃貸で貸し出すことで、他の物件の2倍近い利益を得ている。晴海フラッグには海外からのマネーも流入していた。不動産仲介業者に持ち込まれた部屋は元々7000万円余りだったが、2倍以上の価格で売れた。この業者が売買を仲介した10軒のうち3軒は海外の富裕層が購入したという。現状について、土地の所有者である東京都に見解を聞いた。担当者は急激な変化を見通せなかった、状況を認識したところから改善させていただくとした。