漫画家イエナガの複雑社会を超定義 (漫画家イエナガの複雑社会を超定義)
24年、科学誌は世界を変える10大技術のひとつに痩せ薬を選び、肥満症治療に貢献した研究者3名はアメリカで最も権威のある医学賞に輝いた。今、世界では10億人以上が肥満で、治療などに要する経済的コストは年間約4兆ドルにのぼるという。上述した肥満症とはBMIが25以上に加え、高血圧、脂肪肝など11の健康障害のうち、1つ以上が該当するか、腹囲が一定値以上。この治療薬として注目されているのが「GLP-1受容体作動薬」。GLP-1は小腸から分泌されるホルモンで、すい臓にある受容体と結びつくとインスリンの分泌が促進され、血糖値をおさえる。ネックだったのは寿命の短さ。その後、アメリカドクトカゲの唾液からGLP-1と似た物質が見つかり、2型糖尿病治療薬が開発された。17年に承認された「セマグルチド」は高い持続力を持ち、体重減少効果も示した。このセマグルチドを使った「ウゴービ」はイーロン・マスクも使っているといい、24年には日本に上陸した。
肥満治療薬の使用条件は厳しく、ダイエット目的などに使えない。それでも、全額自己負担の自由診療で「GLP-1受容体作動薬」が売られているのが実情。日本肥満学会の横手理事長はダイエット目的で使うと重篤な副作用がありうると警鐘を鳴らし、必要な患者に薬が行き届かないことも懸念されるという。そうした中、治療薬の開発は進んでいる。横手氏は「現代人の肥満は自己責任ではなく、偏見を解消し、患者が安心して生活し治療できる環境整備が大切」などと語った。