楳図かずおが昭和11年に小学校教師の父と優しい母のもとにうまれた。幼い頃には奈良県の山村で過ごし、父は子守唄のように地域につたわる恐ろしい蛇伝説を語ってくれた。その時の経験が30歳で実を結ぶ。その名を世に知らしめたへび少女という作品は母親が口の裂けた蛇女となり、娘を食べようとする物語。以来、ホラー漫画ブームの先駆者として話題作を連発。漂流教室は滅亡した地球で子どもたちが生存競争を展開するSFホラー漫画で家族愛などもありジャンルを飛び越えた。「まことちゃん」を生み出したのは40歳のとき。そして唯一無二の狂気にたどり着いたの「わたしは真悟」は意識を持った産業ロボットとと小学生が心通わすAIを先取りした物語。その直筆原稿が登場。降り注ぐライトの光にショーウィンドウの様々な商品。行き交う買い物客。濃密で徹底して細部にこだわった描写こそ楳図作品最大の特徴。椹木野衣はその絵について構成を突き破るような瞬間的な恐怖があり、怖いけど何かわからないものを描く点においては飛び抜けていたという。怖いのに笑ってしまう。ストーリーを超越して読者の心を鷲掴みにした。そして楳図かずおのアシスタントをしていたこともある漫画家の高橋のぼるさんは造形を生み出す能力があったと答え、画力とともに発揮された類まれな発想力。それが楳図作品の強烈な個性を作り上げた。しかし54歳で発表した「14歳」という作品を最後に筆を置いた。