戦争の長期化で影響を受けるのは原油には限らない。半導体の製造をはじめ、身近なものでは風船、リニアモーターカーや医療機器のMRIの冷却にも使われているヘリウムも、影響を受け始めている。国際エネルギー機関の事務局長は「石油ショックとガス供給の崩壊が同時に起きている」と警鐘を鳴らしている。体の中を断面で映し出す医療機器MRI。強力な磁場を作り出すためにヘリウムが使われている。イラン情勢の影響で世界には今、かつてないほどの危機感が広がっている。発端となったのは、世界最大の液化天然ガスの生産拠点があるカタール・ラスラファンへのイランのミサイル攻撃。年間1280万トンの天然ガスの生産が最大で5年間停止する可能性があるそう。ヘリウムはこの天然ガスの副産物で、カタールは世界供給の3分の1を担っている。世界経済に欠かせない天然ガス、ヘリウムともに供給がストップしたことになる。ヘリウムと言えば馴染みがあるのは風船や飛行船だが、それ以外にも使われている。産業のコメ、半導体。精度はナノレベル。わずかな不純物も許されない極めてデリケートな半導体の製造。ヘリウムの沸点は-269℃と、全ての元素の中で最も低い温度まで液体でいられるため、冷却材として活用しやすい性質を持っている。また、他の物質とほとんど化学反応しないため、クリーンな環境が求められる精密機械の分野で特に重宝されていて、業界では黄金のガスとも呼ばれている。その用途は幅広く、半導体の他、宇宙産業など最先端の技術に欠かせない存在。名古屋工業大学の大原繁男教授は、ヘリウムを使って電気抵抗をゼロにする「超電導」などについて研究している。その希少性から今後はリサイクルが必要になると指摘する。
