岩手県大船渡市でアワビの陸上養殖を手掛ける元正榮北日本水産は、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた施設の復旧が10年ほど前に完了しようやく売上が震災前の水準に戻った矢先に起こったのが大規模山林火災だった。去年2月26日、市内で発生した山林火災は西寄りの強い風と乾燥で瞬く間に燃え広がった。鎮火が宣言されたのは1か月以上が経った4月7日。この火災で90代の男性1人が死亡したほか、住宅や漁業用の倉庫など建物226棟が焼け延焼範囲は平成以降の日本最大となる3370ヘクタールに上った。農林水産業の被害額は100億円を超えている。元正榮北日本水産の会社にも火の手が迫ったが従業員は避難するのが精一杯だったという。アワビの養殖施設本体の被害は免れたものの、海水を送る配水管が焼け養殖されていた約250万個のアワビが死に、被害額は5~6億円に上った。養殖事業を再開させてはいるが、アワビの本格出荷にはさらに1年はかかる見込み。そんな中今月2日、古川社長と息子で専務の翔太さんの姿が北海道福島町にあった。会社存続のための新規事業としてアワビ養殖のノウハウを伝えるコンサルタント事業に乗り出した。会社の養殖水槽の中のアワビは現在4cmほどに育っている。震災と森林火災の二重被災となった水産会社が災害に負けない企業を目指して新たな一歩を踏み出している。
