先月、仙台市青葉区に原子や分子など極めて小さな世界を見ることができる世界最先端の研究施設がオープンした。この施設に企業の熱い視線が注がれている。“巨大な顕微鏡”とも呼ばれる施設「ナノテラス」は、国や地元の自治体、経済界などがおよそ380億円かけて整備した。施設を上から見た図を紹介。直線の加速器から生み出されるほぼ光の速度の電子が、1周349メートルの円形の施設を回る。その電子を施設に備わった磁石で曲げると太陽の10億倍明るい光が発生する。極めて強い光で照らすことで、ナノ=100万分の1ミリという小さな世界まで、物質の表面の状態や詳しい構造を見ることができる。この施設は大企業や大学に加えて、研究開発の経験の少ない中小企業が気軽に利用できるのも特徴。その秘密が、製品開発をしたい企業と解析などの技術を磨きたい研究者をマッチングして、共同で利用してもらう仕組み。すでにおよそ150の企業などが利用する予定。その一つ、宮城県の精密部品の加工会社。従業員およそ70人、世界トップレベルといわれる研磨技術があり、製品は半導体や宇宙関連などの分野で活用されている。ナノテラスを使って見ようとしているのが、金属の表面。これまで研磨しやすいよう化学薬品を使っていたが、化学薬品の代わりに目に見えない小さな泡を使って酸化させるとどうなるか、確認したいと考えた。社長の赤羽優子さんは、共同研究する研究者からナノテラスでの分析の結果を伝えられ、鉄とアルミニウムで効果がありそうだと分かった。今後も実験を繰り返し、実用化を検討することにしている。ナノテラスと隣接する敷地では、企業の研究開発拠点やスタートアップを集積させるサイエンスパークの構想が進められているということで、企業の注目度がますます高くなりそう。