ウクライナの首都キーウの夜空。北斗七星、天の川が見える。ウクライナでは美しい星空を楽しむ機会すら失われている。執拗に続くドローンやミサイル攻撃で空に恐怖心や嫌悪感を持つ市民もいる。外出禁止令が出され夜に外を歩くことができない日もある。71年前に開業したキーウプラネタリウム。ヨーロッパ最大級のドームに映し出される星空は長年市民に親しまれてきた。20年以上開設員をつとめるオクサナ・チェルヌソワさん。戦時下の今も星空の魅力を伝え続けている。かつて子どもたちはチェルヌソワさんが映し出す満点の星空に熱狂した。この場所で科学や宇宙への好奇心を育んだ。ロシアによる軍事侵攻以降、授業で訪れる学校もほとんどなくなった。侵攻直後は一時閉館したが3ヶ月後に再開。設備に被害はないが、来館者は3分の1に減った。ウクライナ東部など攻撃が続く地域ではプラネタリウムの状況はもっと深刻だ。ハルキウにあるプラネタリウム解説員オレナ・ゼムリャチェンコさん。軍事侵攻以降、去年から日本に一時避難している。ハルキウやドネツクでは施設が損傷。現在も放置されたままで再開の見通しは立っていない。キーウプラネタリウムでは毎週1回、東部からの避難者や前線にいた兵士を無料で招待している。戦闘中に片足を失った元兵士は息子を連れて訪れた。プラネタリウムは多くの市民に癒やしや希望を与えるとチェルヌソワさんは考えている。チェルヌソワさんはいつか心置きなく星々の輝きを楽しめる日がくることを待ち望む。