九州の中央部にある阿蘇山。2021年10月に大きな噴火が起き、噴煙は上空3500mにも達した。阿蘇の山々は約27万年前に活動を始め、長い時を経るなかで独特の地形を生み出してきた。このうえなく大きな噴火によって地盤が陥没して生まれた地形「カルデラ」は、東西18km、南北25kmにも及ぶ。外輪山の斜面には22000ヘクタールにもなる日本最大級の草原が広がっている。毎年春、1000年以上前から続く阿蘇の伝統行事である野焼きが行われる。草原が藪にならないよう地表に火を入れることで木々の成長を抑えている。野焼きが終わると草原が息を吹き返す。植物が芽を出しバッタやキリギリスが姿を現す。野焼きから一月も経たないうちに大地は緑に染まる。初夏、草原では牛が放牧されている。カヤネズミは器用に草の上を歩きながら種や小さな虫を食べて暮らしている。外輪山にある大きな穴ではアナグマが枯れ草を集めている。枯れ草を穴に敷き詰め子育ての巣を作っている。夏の盛り、草原は一層活気にあふれる。カワラナデシコなどの花が咲き誇っている。絶滅危惧種のコジュリンが草原で子育てをしている。全国的に草原が減っているいま、阿蘇は貴重な繁殖地となっている。秋、草原にキツネが姿を現し獲物となる昆虫を探し、冬に向けて栄養を蓄えている。阿蘇のカルデラと大草原には、人の暮らしと生き物たちの営みが調和した豊かな命の世界が広がっていた。
