イギリスでは4日、議会下院の650議席を争う総選挙の投開票を迎えた。ジョンソン元首相のコロナ対応やトラス前首相の減税政策などが痛烈な批判を浴び、今回14年ぶりの政権交代が確実視される。与党保守党の議席数は102議席と改選前に比べ3分の1以下の一方、最大野党労働党は431議席と単独過半数を獲得して政権を奪う見通し。投票は日本時間の明日午前6時に締め切られ即日開票される予定。北東部にあるニュートンエイクリフは、産業革命を支えた鉄道発祥の地で鉄道とともに繁栄してきた。この町に9年前、日立が進出した。総工費は日本円でおよそ164億円で、英国の在来線を走る鉄道車両の製造などを行っている。工場建設にあたり、当時保守党を率いていたキャメロン政権は8億円を助成。この工場、実は英国が進める「ハイスピード2」と呼ばれる国家プロジェクトにも深く関わっている。ロンドンからマンチェスターなどの南北をおよそ1時間で結ぶ高速鉄道はこれまでの半分の時間で移動が可能となり、ロンドンなど南部に偏っていた英国経済の格差解消も狙う。来年から車両を製造予定で契約金額は3940億円に上る。しかしスナク首相は去年、コストが大幅に膨れ上がったとして鉄道の建設区間を英国中部からロンドンまでに大幅に縮小すると発表した。工場は大規模な人員削減を計画。コロナ禍による鉄道需要の落ち込みで車両の受注が減っていることが主な理由だが、この結果「ハイスピード2」の車両製造の先行きにも不透明感が増しているとしている。日立は取材に対して「まだ何も決まっていない」としている。工場がある地区では前回の総選挙で保守党の候補が当選。しかしある世論調査会社は、この地区では94%の確率で労働党の候補者が勝利すると予想している。労働党のスターマー党首は今年4月に日立の工場を訪問。総選挙で勝利すれば「旅客鉄道の大部分を国有化する」と発表し、鉄道事業への国の関与を深める考えを示した。