2023年、あるアメリカ映画が世界的なヒットを記録した。アメリカの原爆開発プロジェクト「マンハッタン計画」を率いた物理学者、ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いた「Oppenheimer」である。核兵器をこの世に生み出し、”戦争を終わらせた英雄”、あるいは”悪魔の兵器の生みの親”と呼ばれた男、オッペンハイマー。彼が国家の大義を信じてロスアラモスで研究を続けていたのと時を同じくして、海の向こうの科学者たちも核の力に酔いしれていた。ドイツではオッペンハイマーの師とも言える天才、ヴェルナー・ハイゼンベルクが。そして、日本では原子物理学の父と呼ばれた仁科芳雄が。世界中の科学者たちが求めた核の炎は21万の命を奪い、世界のあり方そのものを変えていく。「我は死、世界の破壊者」……今回は、今もなお称賛と呪いを浴び続ける1人の天才科学者の物語。