先月8月は株価が記録的な乱高下をした月だった。背景にあったのは、米国経済の先行きへの不安や急に進んだ円高だったが、現場では何が起きていたのか。日本に多額の投資をしている資産運用会社とヘッジファンドを取材した。都内にあるフランスの大手資産運用会社の日本法人。運用額は世界8位(2023年12月末時点/インベストメントペンションヨーロッパより)、日本ではおよそ8兆円を運用している(2024年6月末時点)。投資の方針を決める最高責任者は、先月5日の株価急落はある程度予想できていたと明かした。大手資産運用会社「アムンディ」ヴァンサンモルティエ最高投資責任者は「円相場が極端な値動きをしていたので、株価の急落はいつか起きるだろうと思っていた。日本の株を売っていたのは、きわめて短期のマネーを扱うヘッジファンドや投資顧問などの業者」と述べた。しかし、長期で日本株を保有すれば利益が出ると考え、今回、手放す選択はしなかったという。一方、積極的な取り引きを行い、結果として利益を得たという投資家もいる。シンガポールを拠点に日本株をメインに運用するヘッジファンドの最高経営責任者はあの日、多くの銘柄が大きく値下がりする中、買うべきものに狙いを定めていたという。ヘッジファンド「ヴィレッジキャピタル」高松一郎最高経営責任者は「あの局面で一番やってはいけないことは底値での投げ売り。以前から、これぐらいまで下がれば買いたいという銘柄のリストは常に用意している。そういうものをさらにアップデートして買うべき物は買うという対応をしていた」と述べた。超低金利と円安を前提に、膨大な投機マネーが流れ込んでいた日本の金融市場。そうした投機マネーは、日銀の利上げと円高を機に“日本から急速に離れた”と指摘する。高松氏は「今回の急落はかなりポジション整理の側面が強かったと思っていて、ファンダメンタル(経済の基礎条件)的にはあまり変わっていない」、モルティエ氏は「日本の株式市場はここ数年多くのリスクマネーを集めてきた。しかし今回そうしたリスクマネーは日本を離れていった。中期的に見ると日本にとっていいことだ。グローバルな投資家にとって日本市場は欠かせない投資先となっている」と述べた。今後の日本の株価について聞いたところ、2人とも年末に向けて回復に向かうだろうと予想した。海外の投資家が、円安で低金利だから日本株は買いと見ていた状況は変わった。これから問われるのは日本企業の実力になる。