三ノ輪駅近く、かつて吉原遊郭として栄えた場所にある明治38年創業の「桜なべ 中江」。築100年以上の店舗は登録有形文化財となっている。店主は生まれも育ちも地元の4代目・中江白志さん。お客さんのほぼ全員が注文するのが桜鍋の「極上桜肉ロース」。馬肉をすき焼きのようにしていただく鍋は明治の頃から長年親しまれてきた。通常の倍の約7年飼育した馬肉を使用。お肉を食べ終えたら肉の旨みが溶け出した割り下でお麩、ブナシメジ、ネギなどを煮込む。当時、馬に乗って吉原に遊びに行く人もいて、お勘定の時に足りなくなって借金のかたに馬を預け、回り回って肉になった。最盛期は吉原だけで20〜30軒、桜鍋の店があったという。関東大震災や東京大空襲でほとんどのお店が焼失。中江は難を逃れ、吉原に残る数少ない「桜鍋」の店になった。これまでに多くの人が訪れ、昭和の作家・武者小路実篤や元横綱・千代の富士や北の富士、北勝海も桜鍋を楽しんでいた。