下北沢にある1984年創業の中華そば専門一龍は基本メニューはラーメンとギョーザのみ。チャーシューやメンマなど色んなトッピングが選べる。お客さん絶賛の中華麺は都内では珍しい敦賀ラーメンというご当地ラーメン。戦後福井県敦賀で屋台から始まった中華そば。特徴は豚骨と鶏ガラで出汁をとったコクのあるしょうゆ味のスープ。刻みニンニクに中太のちぢれ麺、具はチャーシュー、メンマ、紅ショウガが乗っている。ラーメンを作るのが2代目の坂井一雅さん。13年前に父から店を継いだ。初代である父・坂井良三さんは今でも開店前の仕込みを手伝っている。40年前に下北沢にオープンした一龍だが、当時珍しかった中華そばのみというスタイルが最初は敬遠されてしまった。その後ラーメンブームが起きると地方発の独自の味が認められ、若者を中心に人気を呼んでいった。一雅さんは大きくなったら料理の仕事をしたいと子供心に思っていたが、料理学校で和食や洋食を学び、ラーメンばかり作る父の店で働きたくないと他の料理店に就職してしまう。しかししばらくして父が交通事故にあい店を休業することに。同じ頃自分の子どもが生まれた一雅さんは自分が親になり初めて店を継ごうという気持ちになったという。しかし今まで父の中華そば作りに真剣に向き合って来なかったため、父が修行した敦賀の叔父の店で自分も修行をすることにした。なかなか父と同じ味が出せないことで一雅さんがやったのが父の仕事を細部まで徹底的にまねることだった。スープを煮込む火加減やかき混ぜたりアクをとるタイミングを父と同じに。ニンニクはスープと合わせた時に少しずつ風味が出てくるよう細長く切る。メンマは細く割いて麺となじむようになど細部にわたって父の仕事をまねることで父のラーメンに少しずつ近づき今では常連さんたちに認められるようになった。一龍はテナントビルの老朽化のためこの9月で移転するという。同じ下北沢で11月に新規オープンの予定。