短歌の愛好家から寄せられた優れた作品を紹介するNHK全国短歌大会が、東京・渋谷のNHKホールで開かれた。ことしは5歳から103歳までの作品1万4000首余りが寄せられ、この中から3人の短歌が大賞に選ばれた。大阪府の今西富幸さんの歌「ガザを出る姉妹が開けた鳥籠を思う土曜のペット売り場に」は、飼っていた鳥を逃さざるを得ないガザの幼い姉妹が置かれた境遇と平和な日本の生活を重ね合わせて詠んだもの。同じ地球に暮らしながら両者の対照的な状況に深く思いをはせた点が評価された。東京都の芋高舞さんの歌「わたしだけ死ななかったらどうしよう渋谷こんなに光だらけで」は、作者の根源的な孤独感を詠んだもので、ことばが鮮烈でそれが人の生と未来の死を表裏に貼り付けていると評価された。神奈川県の瀬生ゆう子さんの歌「茎のにおいするとき茎はちぎれていてこれはだれかの心のにおい」は、人間の心の傷は見えず香りもないものの、植物のように何かを発しているはずだと、ちぎれた茎から感じ取った心の深さがいいと評価された。大会の模様は6月1日、8日、15日、22日の午前6時からEテレで放送される。