関西空港はきょうで開港から30年。変わり続ける関空の一角で、開港以来あるものを作り続けている人がいる。空港の裏側を取材した。管制塔の近くにある建物で作っているのは、空の旅を彩る機内食。下ごしらえから調理、盛りつけまで、ほぼすべての工程が手作業。関西空港に就航する航空会社のうち、21社の機内食を一手に引き受けている。料理長を務める兵庫出身の今西祐介さんは、機内食を作り続けて30年になる。今西さんは専門学校で調理を学び、開港の年に機内食工場に就職。当初は限られた時間で会社ごとに異なるメニューに対応するのに精いっぱいだった。料理の下ごしらえを5年ほど担当し、その後10年以上経験したのが“ホットキッチン”と呼ばれる加熱調理。ここに機内食ならではの調理法がある。焼き過ぎると中まで火が入ってしまうため、ステーキは高温の鉄板の上で表面だけを2分程度手際よく焼いていく。機内食が調理されるのは、乗客に提供される半日も前。衛生管理のために5度以下まで冷やしてから機内へ。出発後に温めたときに最高の味になるよう、絶妙な焼き加減とタイミングが求められる。9年前からは、念願だった開発担当に。これまで500以上のメニューを手がけてきた。メニューの決定後も仕事は終わらない。航空会社の担当者が毎月試食に訪れ、改善を求められる。細かい注文に対応し続け、工場の料理の評価は年々高まっていった。メニューの開発は長年航空会社が行っていたが、今では今西さんたちが提案したものがほとんど。節目のことし、今西さんは「料理長」に就任した。今、部下とひそかに挑戦しているのが“たこ焼き”。航空会社からよくある要望の1つが“ご当地感”。出来たてを食べてもらえない機内食には不向きだが、大阪を代表する一品を盛り込みたいと考えている。今西さんにとっては、培ったノウハウをどう後輩たちにつないでいくのかももう一つの挑戦。米国人の乗客のコメント。