今回の物語は、川崎市宮前区。有馬三田橋三叉路のすぐわきにある15代続く地主・伊藤家の庭と土蔵。地主の家の周辺は昭和40年頃まで里山の原風景が残っていた。有馬川やそこにかかる三田橋など懐かしい景色を伊藤家の敷地にと、建築家・川口裕人さんによって2023年伊藤家の庭と土蔵は京料理店へと生まれ変わった。店に続く歩道は土と同じ色に着色、江戸後期に作られた土蔵。檜のカウンターに置かれるのは、お出汁が自慢の本格京料理。店を出ると三田橋の三叉路を枯山水で表現した庭、3本の石柱は実際に三田橋に使われていたもの。この庭を楽しめるよう、果物倉庫に小部屋を増築、軽くて耐久性に優れた銅葺き屋根は職人が1枚ずつ手作業で貼り付けた。有馬の原風景を見渡せる静かな空間。