石川県奥能登地域の食材を使った丼を出す店がある。店の代表をつとめる日向文恵は能登半島地震で被災した。600年以上続く寺の一角で営んでいた輪島市のカフェは屋根や柱が崩れ落ち、立ち入る事すら困難になった。現在も机や食器が散乱して元のように経営ができなくなっている。カフェの営業という生きがいをなくした日向文恵に店を出さないかという誘いがあった。場所は新幹線が開業したばかりの福井駅前だった。輪島から遠く離れた福井でのオープンにあたって日向文恵は輪島塗の器を用意した。被災したカフェからかろうじて15個だけ見つけて大切にしてきたものだ。店のオープンの日、開店とともに多くの客が訪れた。輪島塗の器は料理の美しさを引き立て食欲をそそった。被害をまぬがれた輪島塗の器でふるさと・能登の味に触れてもらい1日も早い復興につなげたいとの願いが丼に込められている。食材の調達は、福井県内の業者の協力もあり、日々届けられているという。先月からは、海鮮系を能登から直接仕入れることができるようになっているという。