小林栄美香さんは上唇・上あご・鼻のない状態で生まれた。口唇口蓋裂は先天性異常の病気の1つで唇が割れた状態で生まれる口唇裂と口蓋が裂けて生まれる口蓋裂の合併症。日本では500人に1人の割合と言われている。小林さんは母乳を吸うことができずミルクを飲ませるのもチューブが必要だった。退院できたのは生後1カ月。7歳の兄と初対面し兄の反応に両親は勇気づけられた。その後、大阪大学歯学部附属病院で治療をスタートするも治療に当たったのは松矢教授と古郷医師で口唇口蓋裂治療で国内トップクラスの名医。生後3カ月、口唇裂の手術を行うことになった。手術は唇・鼻の機能面・形状を正常にする。小林さんは唇の組織が足りなかったので困難を極めたが手術は無事成功し上唇ができ、ミルクを哺乳瓶で与えることができる。小林さんは生後6ヶ月で自分でミルクを飲み始めた。続いて1歳3カ月のとき、口蓋を閉じる手術を受けた。これも口蓋の組織が足りず難手術だったが無事成功した。これで話せるようになると期待したが自分から話しかけなかった。その原因は耳の近くの声・大きな音しか聞こえていなかった。すぐに骨伝導補聴器を使い始め言葉を覚え、ようやく話すようになった。小学生にあがると母は隠すことなく娘に説明した。その時の寂しそうな顔を母は今でも忘れられないという。9歳のときに上あごを前に出す最先端手術を受けた。中学では友だちが出来たが治療を優先し学校を休みがちだった。友だちもいなくなり不登校となる。そしてネットで探した高校では素行不良や引きこもりの生徒を支援する学校だった。そこで予想もしなかった出会いがあった。