今週、待望の警察ミステリー「可燃物」を発売した米澤穂信さんを直撃。表題作「可燃物」について話を伺う。作品は、古典的なホワイダニットが問いになるミステリーだという。群馬県警捜査一課の葛は、太田市で発生した7件の連続放火事件を担当。その日は1件目の火災現場を訪れていた。燃えたのは収集日前夜に出された可燃ゴミ。幸い火の手は弱く、通報者により消火された。他の放火も生活ゴミばかり狙われたが、いずれも大事には至らなかった。放火犯は同形の犯罪を繰り返す傾向が強い。葛は、過去の手口資料にも目を通すが、今回の事件とは似ていない。犯行動機をつかめずにいた。燃えるゴミだけが狙われるのはなぜなのか。「可燃物」を思いついたきっかけについて米澤さんは「今回はホワイダニットを書いていこう。人間はどういう時に自分のやったことを隠したいと思うか。切なる動機というのはどういうものがあるか。心の動きを見つめるところから始まっている」と話した。依然として犯人の動機は不明だったが、3人の不審人物が浮上。1人目は19歳の少年。公園でライターで遊んでいたという。2人目は大野原という年配の男。ゴミ置き場で可燃ゴミをしばらく見ていたため調べると、元職場が過去に全焼していた。3人目は、傷害・恐喝の前科がある高柳。火をつけたたばこを捨てさろうとする姿を刑事が目撃したが、火災には至らず捕まえられなかった。そんな中、犯行が止まり、警察は犯人を特定できないまま捜査は難航。なぜ放火は止まったのか。犯行動機が気になっていた葛にはある考えが浮かぶ。犯人は目的を達したのかもしれない、それならもう二度と放火は起きない。すると、連続放火事件の見えざる共通項が浮かび上がり、葛は犯人の目的を確信する。連続放火犯と驚くべき犯行動機、全てが明らかになった時訪れる思いもよらない結末とは。米澤さんは「今回やろうと思ったのは本格ミステリーで、謎解きを書くための小説だった。被害者・加害者の心、社会の状況を書いていくと、自然と人の心や世の中を書くことに繋がっていく。それが小説の膨らみや豊かさ、奥行きを呼んできてくれる。そういう形で書ければいいと思っていた」と話した。