おととし4月、番組で中継した福島県・富岡町の夜の森地区にある「桜トンネル」。富岡町のシンボルである桜420本が約2.2kmにわたり立ち並んでいる。4月には1日約1万人が訪れることもあるという「桜まつり」が開催され、多くの人が春を感じる場所だ。今月はじめ、その桜トンネルを訪れた。福島県・富岡町に住む渡邉優翔さん(24)は震災当時は10歳で、富岡町から50kmほど西にある須賀川市で震災を経験したという。渡邊さんの家業は300年続くツツジ園。幼い頃から花に触れ、花を大事にしてきた。そんな渡邉さんが震災後に富岡町で目の当たりにしたのはツツジで覆われていた夜ノ森駅の変わり果てた姿。除染のためにツツジが伐採されていた。花が失われた町を見て再び花でいっぱいの町を取り戻そうと花を植えたり育てたりする「緑化活動」を始めた。しかし活動のなかで震災の影響が富岡町のシンボル・桜にもあることを知ったという。3年前の1月に規制が緩和されるまで12年人の手が入らなかった夜の森の桜トンネルのエリア。桜は伸びた枝を定期的に切ったり、その切り口を保護したり、葉や木の虫による食害を防いだりと維持するために手入れが欠かせない。一部の桜の木が虫や病気に侵されていた。満開の時期になると県外からも多くの人が訪れる桜トンネルは町の人にとっても誇りだという。しかし渡邉さんによると12年放置された桜はこのままだと倒れてしまうおそれがあるとのこと。桜トンネルの桜と同じ大きさになるまで最低でも30年かかるため今すぐに桜を育てようと、去年、この町に移住した。見せてもらったのは桜トンネルのものと比べると幹がまだ細い樹齢3年ほどの桜の苗木。夜の森の桜を植え替えるため、また新たな場所にも桜を植えるため桜を育て、その管理をしていた。今は9月の植樹に向け425本の桜を毎日欠かさず手入れしている。そんな夜の森の桜を全国の人に知ってほしいと町の協力を得て桜を使い作っているのが元気な桜の花びらからとれる酵母を使って発酵させたお酒。さらにこのお酒から出る酒粕を使って作ろうとしているのがアイスクリーム。先月、東京・葛飾区で渡邉さんは5月ごろの発売に向けて打ち合わせに来ていた。工夫を凝らしたお酒やアイスの売上の一部は富岡町に花を植える活動などに還元していくという。富岡町の桜を知ってもらいたい、その桜を守りたいという渡邉さんは「夜の森の桜のように立派に育てられるか、いろんな方々が関わってくれるかすごく不安はあるが、やってみないと分からない。理想は自分たちが植えたものが毎年きれいに咲く様子を楽しんでほしいし、みんなの宝となって一緒に見ることができたらいいな。」などと話した。
住所: 福島県双葉郡富岡町字夜の森北1-33