今月10日、授賞式が行われることしのノーベル平和賞には日本被団協が選ばれ、受賞理由には被爆証言の重要性が挙げられた。被爆者の高齢化が進む中、広島市から伝承者として委嘱を受け、93歳の被爆者の体験を本人に代わって伝えている女性がいる。伝承者の青木圭子さん。14歳のときに動員されていた工場で被爆した、梶本淑子さんの体験を語っている。青木さんは結婚を機に東京から広島に移り住んだ。子育てに追われ、原爆や平和について考える余裕はなかった。考えが変わったきっかけは、20年余り前。大学生だった次男が、県外から来た友人を原爆資料館に案内していると聞いたことだった。平和公園を案内するボランティアを始めた青木さん。原爆の被害を自分ごととして考えてほしいという思いを持つようになり、伝承者の募集を知って手を挙げた。そんな中で出会ったのが、梶本淑子さん。伝承者として、証言を受け継いでいく決意をした。伝承者に委嘱された9年前から、県内外で講話を続けている。これまでに行った講話は150回を超え、およそ9000人に梶本さんの体験を伝えてきた。それでも、原爆の惨禍を目の当たりにしていない自分がどこまで伝えられているかという思いは今もある。少しでも体験を受け止めて講話ができるよう、青木さんは原爆投下直後に梶本さんが向かった公園を訪れるなど、努力を重ねてきた。久しぶりに梶本さんに会った青木さん。この日、5年ぶりに講話を聞いてもらった。原爆慰霊碑に向かった二人。青木さんは梶本さんの証言を伝承者としてつないでいく思いを新たにしていた。