TVでた蔵トップ>> キーワード

「天尊降臨ヒムカイザー THE MOVIE -それぞれの絆-」 のテレビ露出情報

デボラはアメリカから九州の宮崎に移り住み、24年になる。日々の街歩きも研究の一環となっている。宮崎の町中でも30分歩いただけで10体ほどのキャラクターと出くわした。世界的に見ても日本はあらゆる場面でキャラクターを作り出す独特な国と定義するデボラ。漢字を使う日本だからこそビジュアル化が進み、ひいてはキャラクターも増えたという。この日デボラが訪ねたのは、梅の開花に合わせて今年開かれるイベント。しかし多くの観客の目当ては梅ではなく、宮崎県のゆるきゃらの「みやざき犬」であった。みやざき犬のシンボルキャラクター・みやざき犬はひぃくん・むぅちゃん・かぁくんの3匹の犬で、宮崎の古い呼び方である「ひむか」をもじって名付けられている。本来は宮崎を広くPRするため、県の観光推進課が誕生させた「みやざき犬」。ところがこのキャラクター自体がファンを集めるようになってきた。地域おこしのために生まれたキャラクター自体が本来の意味を超えて愛される存在になってしまう。デボラの調べではこうした現象は宮崎だけではなく、日本中で起こっている。あらゆる論文や書籍・グッズなどからその理由を探り続けてきた。注目するのはキャラクターの名前で、うまいダブルミーニングだと指摘したのは県と犬という同じ音をうまく活用して県名の宮崎を印象付けている点である。言い換えればただのダジャレだが、言語人類学的な視点では重要なのだという。言語人類学はことばと文化の関係性を探る学問であり、言語やコミュニケーションのパターンや規則性を分析する。デボラはキャラクターの名前に隠された規則性を探るため、データベース化も試みた。地方自治体が運営するキャラクターの数だけでも全国で1,500体を超えるとも言われている。サウンドシンボリズムと呼ばれる現象は言語の持つ音が何かのイメージを喚起させることを指すという。日本のキャラクターのネーミングにはサウンドシンボリズムが多く見られるのだとデボラは指摘する。データベースから見る限り、幸せを連想させる「ppii」は48でクールさを連想させる「rin」は43ものキャラクターに使われていた。
デボラが所属する大学の中にもキャラクターは存在しており、宮崎短大のキャラクター「しのぽん」であった。”しの”は大学のある「忍ヶ丘」に由来し”ぽん”は子どもなどのかわいらしさを印象付けるために使われる日本語のサウンドシンボリズムである。保育科のあるこの短大では保育園のイベントに参加して大学をPRしたり、在学生を元気づけたりするために活躍している。学生や職員だけでなく、地域の人も出入りができる図書館で利用法など愉しく優しく伝えるために活躍している。その図書館のキャラクター「ぎんまるくん」はこの地域の象徴である「ぎんなん」のぎんとやわらかい響きの「まる」を組み合わせることで親しみとかわいらしさを表現していた。エンターテインメントの街・ラスベガスで生まれ育ったデボラは大学進学後、日本語を学ぶ中で友人に勧められたのがアンパンマンのアニメだった。日本語における音の魅力に興味を持ったデボラは修士論文でアンパンマンを題材に、日本のキャラクターと言語の関係性について考察する。一方博士論文では日本の塩化を題材とし、女性を花に例えるような日本語が持つような比喩表現の豊かさを研究した。2001年、デボラはさらなる研究のため日本に移り住む。それから間もなく、みうらじゅんさんが「ゆるキャラ」という名前を考案したこともきっかけとなり各地のマスコットキャラクターの一大ブームが巻き起こった。2012年にはついに日本のキャラクター文化をテーマにした論文を世界に発表した。論文の中ではゆるキャラという言葉に使われる「ゆるい」という日本にはない概念に注目した。不安定でぶれているが、愛らしさを表現する言葉として広く使われていることを紹介した。デボラは日本人以外の研究者によるご当地キャラ研究のパイオニアとして、その名を世界に知られるようになった。
デボラが注目するもう1つのご当地キャラクターがおり「天尊降臨 ヒムカイザー」であった。こうした地方発のご当地ヒーローと呼ばれるキャラクターは2000年代半ばからブームとなり、全国で現在300ほどいるといわれる。デボラは10年ほど前、教え子に誘われてショーを初めて見た時ファンの熱気に驚いたという。このご当地ヒーローはおととし映画化もされていた。子どもたちだけではなく宮崎の幅広い層に指示され、資金はクラウドファンディングで集められた。映画はロサンゼルスで開かれた日本映画祭でベストヒーローアワードを受賞。宮崎で活動し始めて15年、本格派のローカルヒーローとなっていた。かわいいご当地キャラとはまた別の愛され方をするご当地ヒーローの魅力とは一体何なのか。この日デボラが向かったのは地元のアクションスクールである。ヒムカイザーの運営者が主催しており、これまで12年間で200人にのぼる生徒がここでアクションを学んでいる。”参与観察”というのは人類学の研究におけるベーシックな調査方法で、より深くその文化を知ろうとする試みである。教えるのは中野崇さんで運営会社の代表にしてヒムカイザーの主演・脚本・演出も務めている。中野さんはテレビで知られる特撮ヒーローのショーで長くステージに立ってきた。その後自分の世界観を作りたいと独立し、会社もヒムカイザーもゼロから立ち上げた。スクールで直接指導を受けて1年、ご当地ヒーローのアクションの秘密についてデボラが気付いたことがあった。デボラによれば中野さんは実に50種類もの音の表現を使い分けて、アクションを説明しているのだという。擬音語や擬態語のバリエーションが豊富なのは日本語の特徴でもある。音を使って作り出すキャラクターの世界観は日本語が持つ言語的特徴がヒーローのかっこいいアクションを生み出し、見ている人を惹きつける。ご当地キャラクターのネーミングで使われるかわいい音の響き・アクション指導で使われるかっこいい音を分析してきたデボラ。そこには共通性があり、どちらも人間の感情を揺さぶっていて日本が豊かで多様なキャラクター世界を持っている大きな理由の一つとのことだった。

© 2009-2025 WireAction, Inc. All Rights Reserved.