ミニチュア作家・谷本朋子は大切な思い出を手元に残したいという依頼を受けてミニチュア作品を作っている。この作品は、銭湯を営んできた家族からの依頼で作られた。15年前、谷本に依頼をした浦川まき子はコーヒー豆をばい煎する職人。ばい煎技術を教えてくれた師匠の仕事場のミニチュアを依頼した。しかし、その師匠は浦川が弟子入りして1か月後に病気で亡くなった。2人は試作を重ねて1年をかけて作品を仕上げた。特にこだわったのが座布団。奥に師匠、手前の座布団に浦川のミニチュアがいて、余命僅かな師匠との思い出が詰まっている。35年前に始め、人の心に寄り添う制作スタイルにしたのはある悲しい出来事がきっかけだった。23年前の朝、当時、小学2年生だった次女を交通事故で亡くした。谷本自身も作品を作ることで喪失感から前に踏み出してきた。より多くの人の心を癒やす新たな挑戦も始めている。地元、東京都八王子市で制作中の巨大ジオラマ。全国から鉄道ファンが集まる場所にしたいと仲間とともに11月のオープンを目指している。谷本が担当しているのは風景作り。田園地帯や里山を通り抜ける鉄道など、誰もが懐かしさを感じる情景を表現したいと考えている。